11話 『こちらが有利すぎる条件』というのは、完全に、こっちのセリフなんだけどね。これほど『敗北がありえないギャンブル』を、俺は、他に知らない。
11話 『こちらが有利すぎる条件』というのは、完全に、こっちのセリフなんだけどね。これほど『敗北がありえないギャンブル』を、俺は、他に知らない。
「いいだろう。では賭けないか、蝉原勇吾。センエースがウムルDに勝てるかどうか。もし、センエースがウムルDに勝ったら、私は貴様の配下となろう。そのかわり、ウムルDがセンエースに勝ったら、その時は、私に忠誠を誓え。私の命令を絶対遵守するコマとなるのだ」
「構わないよ」
「……まさか、乗ってくるとは思わなかった……言うまでもないが、貴様がウムルDに手を出すのは違反だぞ。この賭けは、『センエースが自力でウムルDに勝てるかどうか』が肝なのであって、両者の闘いに、別の要因が関わった場合、全て違反とみなす。もし、この賭けにおいて、何かしらの違反行為が発覚した場合、その時点で、勝敗に関係なく、即座に、私の配下となってもらう」
「しつこいね。念入りに確認しなくていいよ。俺は、構わないと言っている」
「……こちらが有利すぎる条件を、そうもアッサリ飲むとは……なにか裏があるようにしか思えない。もしくは、賭けに負けても、約束を守る気などないから、そんな呑気な態度でいられるのか」
「賭けの成立が心配だというのなら、俺の忠誠だけではなく、誇りも賭けてあげるよ。これなら、賭けの結果を反故にした場合、俺が、俺という個体の中で最も大事にしている『カリスマ』が死ぬことになる。それは俺のアイデンティティの喪失。俺にとって、それは、死と同義」
「……」
「ちなみに、『こちらが有利すぎる条件』というのは、完全に、こっちのセリフなんだけどね。これほど『敗北がありえないギャンブル』を、俺は、他に知らない。あまりに勝ち確すぎて、流石に可哀そうだから、俺が勝った場合の権利は放棄するよ。別に、君なんかいらないし」
「ずいぶんと舐めたことを言ってくれる。まあ、それはともかくとして……バカなのか、貴様。……センエースは、どうやら、事実として、オメガバスティオンを使えるようだが、アレは、極めて消耗が激しいコスパ最低のスキル。もし、常人が使おうものなら、一発で、廃人になるレベルの、燃費最低のキャンセル技。……『どれだけ数値に差があろうと関係なく、相手の技を完全無効化できる』というのは、間違いなく脅威だが、燃費の問題で連発できない以上、寿命が数秒伸びるだけに過ぎ――」
「――オメガバスティオン――」
エアウィンドウの向こうで、
ウムルDが放った二発目の異次元砲を、
センは、またもや、オメガバスティオンで無効化させた。
鼻血をダラダラとたらしながら、
血走った狂気的な目で、
ウムルDをにらみつけているセンエース。
そんなセンの様子を見ながら、
ニタニタと笑っている蝉原を尻目に、
――ショデヒは、
「あれだけ消耗を強いられるスキルを、連発してみせた、というのは、素直に驚嘆する……が、だからどうした? 仮に、まだ使えたとして……だから、なんだ? センエースが敗北する未来に変わりはない」




