10話 センエースを語る時に、数字を持ち出すのは愚の骨頂。存在値など、センエースの前では、ただの飾りに過ぎない。
10話 センエースを語る時に、数字を持ち出すのは愚の骨頂。存在値など、センエースの前では、ただの飾りに過ぎない。
「……波長を合わせて消滅させるなど、普通はできるはずがない。オメガ・ニャルは、専用の資質を持つから使えるのであって、誰でも使えるわけではないはずだ」
「専用の資質を持つ……というのも、完全に解釈違い。その勘違いは、オメガ・ニャルに対する侮蔑だよ。君が誰を侮辱しようと、どうでもいいんだけど……正しい認識だけはしておいてもらいたいかな」
「か、仮に……オメガバスティオンが、『常軌を逸したスペックを持つ者であれば使用可能な技』だったとしても……それはそれでおかしいだろう。センエースは、確かに、優れた力を持つ化け物だが、それは未来の話で、今のセンエースは、小マシな剣翼をもつだけの一般人だぞ。この時間軸におけるセンエースのスペックがゴミ屑だというのは、ここまでの神話生物との闘いでハッキリと確認している」
「ここまでの闘いは参考にはならないよ。だって、俺がいたからね」
「……貴様がいたからなんだと言うんだ」
「センくんはねぇ。『直面している面倒事を、自分よりうまく処理できると確信している優秀な人材』が側にいるときは、とんでもないポンコツになる……という奇妙な特質を持つ変態なんだよ」
「……」
「彼の真価は、『頼る者がいない場面』でこそ輝く……というか、そういう場面じゃないと、小物役に徹するか、味方の足をグイグイと引っ張る」
「……」
「逆に、『頼れるのが自分だけで、かつ、守るべき対象がいる時の彼』は、『並ぶ者がいない世界一のヒーロー』になる。ここからの彼は……理想の英雄。誰も届かない高みで孤高に舞う閃光」
「蝉原勇吾……貴様は、なぜか知らんが、センエースを過大評価する傾向にあるようだ。センエースと一緒に行動している時も、その傾向はみられたものの……あくまでも冗談だと思っていた……が、もしかして、貴様は、本気で、センエースを、高次の存在だと認識しているのか? 『ただの存在値が高い神』ではなく、『もっと高次に位置する超越者』だと……」
「彼を語る時に、数字を持ち出すのは愚の骨頂。存在値など、彼の前では、ただの飾りに過ぎない」
「……愚かしいな、蝉原勇吾。確かに、数値で全てが決まるわけではないが、今のセンエースとウムルDほどの数値の差があれば、結果は明白。『すべてが決まる』と断言できるだけの差が、あの両者の間には存在している。数値の差は絶対ではないが、確定的ではあるのだ」
「本来ならそうだね。けど、センエースが対象の時に限り、その『お行儀がいいだけの常識』は軽やかに覆る」
「いいだろう。では賭けないか、蝉原勇吾。センエースがウムルDに勝てるかどうか。もし、センエースがウムルDに勝ったら、私は貴様の配下となろう。そのかわり、ウムルDがセンエースに勝ったら、その時は、私に忠誠を誓え。私の命令を絶対遵守するコマとなるのだ」
「構わないよ」




