9話 視界一杯に広がる、ウムルDの異次元砲。その輝きが、センエースの意識の中で、一つのパズルになっていく。極めて複雑な知恵の輪。
9話 視界一杯に広がる、ウムルDの異次元砲。その輝きが、センエースの意識の中で、一つのパズルになっていく。極めて複雑な知恵の輪。
「すぅ……はぁ……」
己の呼吸だけで世界の色を構築していくセン。運命の角度が、少しだけ見えた気がした。命の循環が視認できた気がする。
――ウムルDは、クワっと、両眼を開き、
「跡形も残さず、消えてなくなれ……異次元砲」
強烈な照射が、センの視界に広がっていく。
頭の中が、その対応だけで一杯になる。
ほかのことが何も考えられなくなる。
魂魄の全部がポカポカとぬくもって、
心の場所と形が明白になっていく。
絶対の死を前にした極限で、
センの意識が一つにまとまった。
「――オメガ……バスティオン――」
視界一杯に広がる、ウムルDの異次元砲……その輝きが、
センエースの意識の中で、一つのパズルになっていく。
極めて複雑な知恵の輪。
……センエースは、パズルの類が苦手だ。
ひっかけクイズとか、水平思考クイズとか、その辺の、柔らかい頭を使う類のものも苦手。
だから、本来は、解けるはずがない極限。
だが、コンマ数秒の最奥で、センは、答えを見つけ出す。
……ブチッ……
と、異次元砲がちぎれる音が、
センエースの耳で弾けて混ざる。
鼻血があふれて口がカラカラ。
身体の全てが燃えて沸騰しているのを感じつつ、
センは、両手で、ウムルDの異次元砲を、知恵の輪みたいに、分解していく。
キシュインッ!
と、何がどうなって出た音なのか知らんけど、
とにかく、その音がした直後、
センの視界からは、異次元砲が霧散していた。
両手には、感触が残っていた。
『感触すら残らない』という感触がピリピリと響く。
異次元砲を撃ち消されたウムルDは、
目を丸くして、
「っ……なっ……」
声をもらすことしか出来なかった。
★
認知の領域外で、
でかいエアウィンドウに表示されている『センとウムルDの闘い』を観察している、
『蝉原勇吾』とショデヒの二人。
センが、異次元砲をかき消した様を目の当りにしたショデヒは、
センをにらみつけたまま、ワナワナと震えながら、
「オメガバスティオン……だと……? バカな……そんなはずがない……」
反射的に後退りしながら、
震える声で、
「オメガバスティオンは……『オメガ・ニャルの専用技』じゃないのか……なぜ、あいつに、オメガバスティオンが使える?!」
そんなショデヒの困惑に対し、
蝉原が、普段の2割増しのシレっとした態度で、
「専用技というのは、解釈違いだね。最初に『正式乱用』したのは、確かにオメガだが……あの技自体は、手順さえ踏めば誰でも再現できる、『一つの現象』に過ぎない」
「……波長を合わせて消滅させるなど、普通はできるはずがない。オメガ・ニャルは、専用の資質を持つから使えるのであって、誰でも使えるわけではないはずだ」
「専用の資質を持つ……というのも、完全に解釈違い。その勘違いは、オメガ・ニャルに対する侮蔑だよ。君が誰を侮辱しようと、どうでもいいんだけど……正しい認識だけはしておいてもらいたいかな」




