6話 神が貴様らの要望を叶えるのではなく、貴様らが、神の要望を叶えるのだ。時には、その命をもって。
6話 神が貴様らの要望を叶えるのではなく、貴様らが、神の要望を叶えるのだ。時には、その命をもって。
百目鬼と高橋の死を目の当りにして、センは、
「……くっ……」
ヘシ折れるほど、奥歯をかみしめる。
弱くて、誰も守れない自分に対して、心底から怒りを感じている。
それと同時に、惨めさ、無力感に打ちひしがれる。
センは、
「ウムルD……てめぇの相手は俺だ……他のやつを殺すのは、俺を殺してからにしろ……」
肩を震わせながら、
ウムルDを睨みつけ、そう言う。
そんなセンに、ウムルDは、
シレっとした顔で、
「流石に、分かっているとは思うが……神が、虫ケラの希望通りに行動してくれるわけがない。貴様ら人類は、時に、神へ『願い』を口にするが……勘違いも甚だしい。神は、貴様らの願いを聞いたりしない。貴様らは、神の養分であり奴隷。神が貴様らの要望を叶えるのではなく、貴様らが、神の要望を叶えるのだ。時には、その命をもって」
そう言いながら、
また、指をパチンと鳴らそうとした。
明らかに、また殺そうとしている……というのが分かったセンは、
「やめろっつってんだろうが、カスがぁあああ!!」
バチギレの顔で剣翼を突撃させる。
ギュギュンッ!
と、すさまじい速度で、ウムルDの首めがけて一直線。
人の目からすれば、とんでもない速度でも、
神の目からすれば、止まって見えている。
ウムルDは、またも、あえて受け止めて、首を切らせてやる。
胴体から離れた頭部が、空中で停止して、
「頭が悪すぎるな……今さっき、無駄だと言ったはずだ。今、貴様がやっているのは、海を刃物で切ろうとするようなもの……」
と、論理で諭そうとするウムルDだが、
その講釈を、センは一切聞いていない。
「毘沙門天!! 何度も言わすなよ!! 俺の全部を使っていいっつってんだろぉおおおお! 全部くれてやるから、とにかく、『そのクソを止めるために出来る全部』をぶちかませぇえええええ!!!!!!」
ノドがちぎれるほど叫ぶ。
センの『膨大な生命力』と、『本気の命令』を受け止めた剣翼は、さらに、ぶっ壊れそうなほど、ギュンギュンに駆動音を高める。
広範囲に展開された剣翼は、
六芒星に発光し、
空中に、『複雑な形状のジオメトリ』を形成する。
そのジオメトリを見たウムルDは、
小首をかしげて、
「集中力を増大させる領域……と言ったところか。この状況で、そんなものを展開して、いったい、何になるという?」
★
認知の領域外で、
でかいエアウィンドウに表示されている『センとウムルDの闘い』を観察している、
『蝉原勇吾』とショデヒの二人。
蝉原は、足元で転がっている『龍牙峰杏奈』『百目鬼烈也』『高橋隆一』の『肉体状態が正常かどうか』をチェックしてから、三人の体を、お行儀よく、スマートに、スルスルと、丸のみしていく。
三人の高校生を『自身の身体の奥』へと取り込んでいる蝉原の横で、
ショデヒが、『圧倒的な力を持つウムルD』を見つめながら、
「素晴らしい。あれほどのアウターゴッドを、こんなにも早く召喚できるとは」




