5話 高位の魔力やオーラによってコーティングされた肉体は、もはや液体……もっといえば、『海』のようなもの。
5話 高位の魔力やオーラによってコーティングされた肉体は、もはや液体……もっといえば、『海』のようなもの。
「お前ほど清廉な人間なら、周りもついてくるだろう。周りの連中と協力して、どうにか、世界を守ってくれ」
色々勘違いしまくっているセン。輝木は、確かに、すさまじい精神力の持ち主で、センエースに対して破格の執着心を抱いているのだが……それ以外は何もない。
『センエースという心の支え』を失った彼女が自死に走るのは明白……そうでなくとも廃人になる。
その辺もろもろが、センには理解できない。
輝木に愛される価値が自分にあるとは思えない性分だし、根本的に、『人』を見誤っているから。
――センは、ウムルDを睨みつけ、
「いくぞ、ごらぁあああ! 俺一人地獄には行かん! てめぇも絶対に道連れにしてやらぁああああああっっ!!」
ファントムを叫びつつも、
全身全霊の殺意をもって、
ウムルDを狩ろうと突進。
全方位に剣翼を展開させつつ、自身も拳をブン回す。
そんなセンの特攻に対し、ウムルDは、
「さきほど、私の腕を切れたから調子に乗っている感じかな? だとしたら滑稽だな」
そう言いながら、センの特攻や剣翼の猛攻を、あえて全て受け止めつつ、
「高位の魔力やオーラによってコーティングされた肉体は、もはや液体……もっといえば、『海』のようなもの」
一度、バラバラに刻まれたウムルD……
だが、すぐさま、肉体を完全な状態へと再生させ、
「高位の回復阻害効果を含むバラモウイルスでもぶち込んでいない限り、基本物理ダメージが通ることはない。『神』の領域に至った生命体を殺そうと思えば、それ相応の手順というものが必要となる。貴様の剣翼は、なぜか、妙に出力が高いが……それだけでは話にならんのだよ。『グレートオールドワン・クラス』を相手にするのであれば、それでも、まだどうにかなったかもしれないが……私は『アウターゴッド』の領域に立つ者。『強い武器を持っただけの人間』がどうこうできる相手ではない」
と、丁寧に、現状の絶望を解説しつつ、
両手の指を、連続で、パチパチンと鳴らした。
すると、
最初に百目鬼の上半身が吹っ飛んで、
次に、高橋の全身が吹っ飛ぶ。
高橋の全身が吹っ飛んだのを見たウムルDが、ボソっと、
「……おっと、力加減を間違えた……綺麗に上半身だけ吹っ飛ばすつもりだったのだが……」
ウムルからすれば、両手で卵を割った際に、片方の卵だけ、殻が少し混じってしまった……みたいな感じ。
本気で集中していれば、そんなミスは起きないが、
だいぶ、テキトーに、ほとんど脳死で高橋を踏みつぶしたので、
軽くミスってしまったという……なんとも、ナメ散らかした話。
ウムルDからすれば、
百目鬼や高橋の命には、マジで、何の価値もない。
ぐちゃぐちゃに死のうが、綺麗に死のうが、どっちでもいい、なんでもいい。
センは、
二人の死を目の当りにして、
「……くっ……」
ヘシ折れるほど、奥歯をかみしめる。
弱くて、誰も守れない自分に対して、心底から怒りを感じている。




