4話 基本属性は邪悪・闇・死に分類される器……しかし、なぜだか、強烈かつ奇抜な光を有している、奇妙な魂魄。
4話 基本属性は邪悪・闇・死に分類される器……しかし、なぜだか、強烈かつ奇抜な光を有している、奇妙な魂魄。
「おい、お前ら、マジで動けねぇのか?」
と、そう確認すると、久剣・百目鬼・高橋の三名は、催眠術でもかかっているみたいに、軽く朦朧としていて、何も答えなかったが、
輝木は、
「……う……ぐっ……逃げ……て……」
と、その場で動かず、表情は朦朧としているものの、
どうにか、ひねり出したような声で、そう言った。
それを見て、ウムルDが、
「ほう。そこの……『輝木トト詠』とかいう女も、貴様ほどではないが、なかなかの胆力をしているじゃないか」
そう言いながら、
先ほどセンの剣翼に斬り飛ばされた左手を魔法でヒョイと回収する。
そのまま、ネリケシでもくっつけるかのような容易さで、
切れた左手を、左腕にくっつけつつ、
輝木に対し、
「基本属性は邪悪・闇・死に分類される器……しかし、なぜだか、強烈かつ奇抜な光を有している、奇妙な魂魄……だいぶレアなオモチャであることは認めるにやぶさかじゃないが……特に食指は動かないな。私にとっては、『珍しい形をした石』という程度のもの……」
ウムルDがそんな事を言い捨てている間、
輝木は、ウムルDのことなど完全シカトで、
ひたすら、センにだけ、必死にメッセージを送っている。
「逃げ……て……生きて……」
『とにかく、センだけは生き残れ』という頑ななメッセージをぶつけてくる輝木に対し、
センは、タメ息交じり、呆れ交じりに、
「輝木……お前の高潔さは、もうお腹いっぱいだ。聖人ムーブも大概にしておけ。もはや、俺は、お前に対して、キモさ以外、何も感じない。よくもまあ、それだけ利他的に生きられるものだ。この俺のように、もっと自分中心に生きた方が健全だぜ」
輝木の想いが理解できないアホの子センさんは、
輝木のメッセージを、穿って受け止めることしかできない。
いうまでもなく、輝木は、センエースに死んでほしくないから、『逃げろ』と言っているだけで、聖人ムーブをしているつもりは一切ない。
だが、『輝木のような美少女から好意を向けられる可能性』を一切考慮していない、『男の魅力の部分に関する自己評価の低さ』に定評がありすぎるセンは、
「動けないのはよくわかった……お前だけは死んでも守ってやるから……あとのことは、任せたぞ、輝木。……『蝉原も、龍牙峰もいなくなった今、世界を託せるのはお前』ぐらいだ。しんどい荷物を背負わせることになるが……お前ほど清廉な人間なら、周りもついてくるだろう。周りの連中と協力して、どうにか、世界を守ってくれ」
色々勘違いしまくっているセン。
輝木は、確かに、すさまじい精神力の持ち主で、センエースに対して破格の執着心を抱いているのだが……それ以外は何もない。
『センエースという心の支え』を失った彼女は、おそらく、世界に未練がなくなる。
『頑張って生きる理由』を失った彼女は、
『センエースを知る前』のように、『惰性で頑張る』ということはできないだろう。
自死に走るのは明白……そうでなくとも廃人になる。




