2話 センのために『決死の覚悟で働く事』に関しては喜んでするが、『センを殺す事』に関しては絶対に手を貸さない……という、絶対的な意志。
2話 センのために『決死の覚悟で働く事』に関しては喜んでするが、『センを殺す事』に関しては絶対に手を貸さない……という、絶対的な意志。
「貴様らにも分かるように、今の私の状況を伝えよう。――ちょっと大きなハエが数匹、ぶんぶんと周囲を飛んでいる……それだけだ」
そう言いながら、軽く右手を払うと、センの剣翼が、吹き飛ばされた紙飛行機みたいに、ペイっと、簡単に吹っ飛ばされる。
その光景を目の当たりにしたセンは、
「まだだぁあああ! もっとぉ!! もっとよこせ、毘沙門天っっ!!」
さらに、大量の生命力……『自分の全部』を注ぎ込もうとする。
「これで終わっていい、っつってんだろぉお! 全部もっていけぇぇええええ!!」
そう命令するのだが、
しかし、毘沙門天は、センから『一定以上の生命力』を奪おうとはしない。
それに気づいたセンは、
「っっ?! 何をしている! 毘沙門天! 俺のいうことが聞けんのかぁあ!!」
センの『本気の命令』を受けていながら、
しかし、剣翼は、どこ吹く風でシカトする。
センの『絶死の覚悟』を、頑として拒絶する剣翼。
センのために『決死の覚悟で働く事』に関しては喜んでするが、『センを殺す事』に関しては絶対に手を貸さない……という、絶対的な意志。
そんな『ワガママで頑なな剣翼の意志』みたいなものを、
言葉を交わさなくとも正確に『理解』したセンは、
「このクソボケがぁあああああ!! 道具は黙って俺の言う事聞いてりゃいいんだぁああああああ!! この俺様の命令が聞けないってんなら、スクラップにして、ションベンかけるぞ、ごらぁああああああ!!」
なんとなく、センは、
剣翼から、『重たい愛情のようなもの』を感じており、
だから、『嫌われたらどうにかなるんじゃないか』と思い、
必死に、ヒールとしての自分を貫いているのだが、
しかし、剣翼は、そんなセンの『心の機微』みたいなものが、
どうやら、完璧に理解できている様子で、
センが何を言おうと、『自分の意志を曲げる気はない』という姿勢を崩さない。
なんだったら、より深く愛された感じすらする。
「ぐぬぅうううう!」
駄々っ子な剣翼に振り回されるセン。
その途中で、センは、
「せめて、てめぇは逃げろや、龍牙峰ぇえええ! マジで、てめぇ、何してんだぁああああ! どいつもこいつも、俺の言うことを聞いたら死ぬ病にでもかかってんのか、ごらぁああああああ!!」
まったく逃げようとしない龍牙峰たちに対し、
普通にイラついてきた様子のセン。
しかし、そこで、ウムルDが、
「貴様以外の、この場にいる者の心と体の支配は、とっくの昔に完了している」
「……はぁ?!」
「逃げることは勿論、逃げようと思う事もできない……と言っている」
「……っ」
「先ほど、『蝉原勇吾』を殺した時、同時に呪縛領域の魔法を展開させてもらった。本来なら、貴様も、逃走や戦闘の意志を抱くことすらできなくなるはずなんだが……とてつもない精神力で、私の呪縛を弾いたな。決断力と判断力だけではなく、胆力と、精神力と、気合いも認めてやる。『メンタル』という点においては、脆弱な人間の中で最高峰と言えるだろう。……ま、だからといって、この状況を覆せるわけではないが」




