最終話 明確な極限状態に陥ったことで、常軌を逸した回転速度を見せる。ギリギリ、ばちばち、グニグニと、謎の奇音を発しながら、思考が、あっちこっちそっちへと駆け巡る。
最終話 明確な極限状態に陥ったことで、常軌を逸した回転速度を見せる。ギリギリ、ばちばち、グニグニと、謎の奇音を発しながら、思考が、あっちこっちそっちへと駆け巡る。
盛大に爆散した蝉原。静まり返った絶望の中で、ウムルDが、
「危険……という表現は、流石に言い過ぎだな……どういう表現がベストだったか……そうだな……まあ……ここにいる微生物の中では、まだマシな方……というのが最善か……」
などと、そんなことをつぶやくウムルDを尻目に、
センは、頭の中で、
(蝉原が……死んだ……やばい……マジでやべぇ――)
普段は回転率の鈍い頭が、
明確な極限状態に陥ったことで、
常軌を逸した回転速度を見せる。
ギリギリ、ばちばち、グニグニと、
謎の奇音を発しながら、思考が、あっちこっちそっちへと駆け巡る。
その果てに、センは、
「龍牙峰ぇええええええ!! 逃げろぉおおおお!!」
そう叫びながら、
センは、肺一杯に空気を吸い込んで、
「来いぃいいい!! 『毘沙門天の剣翼』!!!」
頭の中で、75ポイントを支払い、
『魔法の剣翼』を購入する。
なぜ、『魔法の剣翼』ではなく『毘沙門天の剣翼』と叫んだのか、
それは、セン当人も理解できていない。
『極限状態で加速した脳』が勝手に叫んだ。
それだけのこと。
名前を呼ばれた『剣翼』は、
『待っていました』とばかりにセンの背中へと顕現し、
ギギギギギギギギッ!!
と、『加熱した駆動音』で、主に、返事をする。
センの背中で唸りをあげる、
異常な性能の剣翼を見て、
ウムルDは、眉間にグっとシワを寄せて、
「……ほう……こいつは驚いた。シンプルに見誤ったな……この中で、最も危険なのはお前だったか」
「毘沙門天!! このクソの眼球をえぐれぇえええ!!」
命令を受けた剣翼は、
高性能なファ〇ネルのように、
ギュギュギュンギュンっと、センの背部から射出され、
半分はそのまま、もっともプリミティブに、ウムルDの左目めがけて突進し、
もう半分は、右目めがけて、切っ先からレーザーを照射する。
その迷いない目つぶし攻撃を前に、
ウムルDは、ニタリと笑い、
「この中で最も危険であることは認めよう……だが、私にとって脅威だとは言っていないぞ」
そう宣言しつつ、
魔力とオーラを両目に集める。
全力で結集させているわけではない。
両目に対して、普段よりも多めに供給している……という程度。
剣翼は、センの命令に従い、全力で、
ウムルDの両目を潰そうとしたが、
しかし、ウムルDの『強大な防御障壁』を貫通することはできなかった。
「言っておくが、この程度の速度なら、避けることも容易い。『彼我の差を教えてやるために、あえて受け止めてやっただけだ』ということを理解しろ、虫ケラ」
などと、優雅に、実力差マウントを取ってくるウムルD。
センは、そんなウムルDの上から発言に対して、特に反応することなく、
「龍牙峰、逃げろ、ぼけぇええええええ! なに、ダラっと見てんだぁあああああ!」
カンペキな最終話でしたね。
メリーバッドエンドでしたが、
しかし、ある意味で、理想のトゥルーエンドだったような気が、
しなくもない今日この頃です。
今日までセンエースをご愛読いただき、ありがとうございました。
ミリオンレイス先生の次回作にご期待ください。




