101話 今日は土曜日だから、ボーナスで雑魚が投入されたのかもしれねぇ。もし、そうだったとしたら、俺も宇宙人を殺して気持ちよくなりたいから、先方は譲れない。
101話 今日は土曜日だから、ボーナスで雑魚が投入されたのかもしれねぇ。もし、そうだったとしたら、俺も宇宙人を殺して気持ちよくなりたいから、先方は譲れない。
「……おっと……これまでとは、ちょっと違う演出を入れてきたな……ついに、チュートリアルが終わったとかか? だとしたら、正直、ちょっと勘弁してほしいな……しんどい思いをするぐらいだったら、永遠にチュートリアルをやっていたい……」
などと、言葉を発した直後のこと、
「キシャァ……」
長い槍を持った『両生類系のバケモノ』が登場した。
肌は灰色で、顔からはピンクの触手が伸びている。
粘液まみれのドロドロで、生まれた直後のように、
プルプルと震えている。
その姿を見たセンは、眉間にシワをよせて、ボソっと、
「え……ムンビ? あれ、ムンビだよな? 初日に殺した一番弱い宇宙人……」
その言葉に、蝉原が、
「ムーンビースト……に見えるけれど……油断はしない方がいいよ、セン君。そういう風に擬態している宇宙人かもしれない」
「ああ、なるほど……弱いフリをしているパターンね……あるある」
そう言いながら、センは、バール片手に、
ムーンビーストの方へと、無防備に歩いていこうとする。
蝉原は、そんなセンの肩を掴み、
「おいおい、センくん、何をしているんだい」
「俺も、ちょっとは活躍したいから、あのカエル、しばいてくる」
「……今、まさに『擬態かもしれない』と話していたところなのに?」
「擬態じゃないかもしれないだろ。今日は土曜日だから、ボーナスで雑魚が投入されたのかもしれねぇ。もし、そうだったとしたら、俺も宇宙人を殺して気持ちよくなりたいから、先方は譲れない」
「……わざわざ、悪役ぶってまで、カナリアの役目を果たそうとしないでいいよ。普通に遠距離攻撃で様子を見よう」
その発言に対し、
センは、眉間にしわをよせ、
「……悪役ぶってねぇし……俺、そんなダサいことしねぇし……俺は、お前よりも普通にワルなだけだし……地元の悪い奴、全員、友達だし」
「君に友達はいないだろう」
そう言ってから、蝉原は、
自分のデスガンの銃口を、ムーンビーストに向けて、
問答無用でズガンとぶっ放した。
すると、ムーンビーストは、地面に落とした豆腐みたいに、
グシャビシャっとグチャグチャになって炸裂した。
一撃必殺。
楽勝で惨殺。
その様子を尻目に、センが、
「……マジで、土曜日ボーナスだったのかな? だとしたら、俺がやりたかったなぁ」
などとつぶやいていると、
……その時、
ブーーン……
と、奇妙な音が響く。
そして、地面にバーっと広がるジオメトリ。
それを見たセンが、焦った声で、
「……おいおい、なんか、ワケわからんことになってんぞ……」
そう言いつつ、
いつでも自分を盾にできる姿勢を整えていく。
(もし、何か、攻撃的なことをされた時は……最優先で蝉原を守る……蝉原さえ生きていれば、なんとかしてくれる……)
心の中で、そうつぶやきつつ、
注意深く、ジオメトリの趨勢を観察するセン。




