表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
505/5862

9話 言い分。


 9話 言い分。


 鬱陶しい『監視魔法の使用者』に対して、『気付いているぞ』と少し睨みをきかせるくらいにとどめ、三人は、赤いじゅうたんの上を優雅に歩いて前に進む。


 通路の先、横に広がりのある巨大な螺旋階段の前で、三人の足が止まった。

 階段の踊り場から、ミシャたちを見下ろしている『三名の老人』の視線が『そこで止まれ』と命じていたから。


 その三老人の中で、真ん中に立っている最も徳の高そうな顔をしている高貴な老人が、


「レイモンドのドーラ嬢だね」


 『ドーラ』は、今回のミッション用に作成した『レイモンドCEOの娘』の偽名。

 ミシャが、ゆっくりと頷いたのを確認してから、その老人は続ける。


「はじめまして。私は、精霊国フーマー、十なる使徒が一人、第二使徒ケイレーン。向かって右にいるのが、コーレン。左はミハルド」


 三老人は、決して頭などさげず、高い位置からミシャたちを見下ろしながら、そう言った。


 それに対し、ミシャは、フラットに、


「どうも、こんにちは」


 小首を揺らす程度でそう言うだけですませた。

 それに対して、感情屋のコーレンが、クワっと目に力をこめて、


「……なんだ、その態度は。立場の違いも分からぬほど――」

「コーレン」


 ケイレーンが、ズンと低い声で、そう声をかけて、


「やめなさい」


 刺すように、一言だけそう言った。

 コーレンは、その瞬間、グっと奥歯を噛んで、視線をミシャからプイと外した。


 その態度に、ケイレーンは、少しだけ目を細めてから、ミシャに視線を向けて、


「もうしわけない。コーレンは、少々気性が荒くてね」


 その通り一遍な謝罪を聞いたミシャは、

 それまでのフラット顔を少し緩め、フッと、鼻で笑ってから、



「もし、さっきのが、『キレる役となだめる役に分かれる古典作戦』なのだとしたら、あまりにお粗末すぎて見ていられないし、もし、本当に、そっちのコーレンとかいうのがただのバカなら、それはそれでお粗末すぎて見ていられないわね」



 小馬鹿にするように微笑むミシャの言葉と態度に、コーレンが、先ほどとは明らかに違う質感の顔色をのぞかせた。

 青筋をたてて、目に血を走らせる。


 なだめ役であるはずのケイレーンは、殺気をだだ漏らしているコーレンに対して、しかし、特に何かを言う事はなく、とうとうと、




「なるほど、そちらの言い分はよくわかった」




 『直接的』に『言い分を口にする』必要などない。

 立場と態度をハッキリさせれば、充分に想いは伝わる。


 ――魔カード産業の中核にいながら、フーマーと本気で決別するつもりか。

 ――驚くほど大胆で、極まって愚かな決断だ。


 言葉にはしていないが、コーレンとミハルドの視線が、そう叫んでいた。


 ケイレーンが、コホンとセキをしてから、


「しかし、結論を急ぐこともあるまい。今年の仮面武道会には、例年と違い、少しだけ『出来る者』をつれてきた。彼らの武を見てから、答えを出す事を強くお勧めするよ。なにより、われわれは、決して敵対を望んでいないということを――」


 話の途中で、ミシャが、ケイレーンの話をブッタ切るように、


「奇遇ね。こちらも、『少しだけ出来る者』を連れてきているわ。ふふ。なんだか、思っていたよりも、楽しい大会になりそうね。すぐに壊れるオモチャばかりだと、見ていても退屈だと思っていたのよ。あなたたちのオモチャなら、きっと、ちょっとは頑丈なのでしょう?」


 そう言ったのを聞いて、また、三老人の顔つきに影が入る。

 もろもろ無礼がすぎる。

 だが、ここで本当にキレるほど愚かではない。


 ケイレーンは小さく息を吸ってから、


「……君が言う『出来る者』とは、その二人のことかな?」


「ええ。優秀な部下よ。『父』からも信頼されている、自慢の家族でもあるわ」





許可をいただいて、描いていただけたミシャのイラストを挿絵のところに掲載しています。

私のラクガキとは、出来が全然ちがいますw


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自作コミカライズ版35話公開中!ここから飛べます。 『センエース日本編』 また「センエースwiki」というサイトが公開されております。 そのサイトを使えば、分からない単語や概念があれば、すぐに調べられると思います。 「~ってなんだっけ?」と思った時は、ぜひ、ご利用ください(*´▽`*) センエースの熱心な読者様である燕さんが描いてくれた漫画『ゼノ・セレナーデ』はこっちから
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ