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25話 予選最後の闘い。


 25話 予選最後の闘い。



 鉄心コールによってバッキバキに強化されたグリムアーツの前では、ユミールなど、ちょっと大きい的でしかなかった。


 空間で跳ねる五つの斬撃が、食い散らかすように、ユミールを裂いた。


 あっけないものだった。



『言葉もない! 見事だ!』



 アビスの称賛が聞こえる。


 そこで、ゼンは、天を仰いだ。


「はぁ……」


 放心状態だった。

 精神も肉体も疲れきっている。


 だが、限界ではなかった。

 『まだ、いけた』というバッキバキに尖った感覚が支配的。

 どこかハイになっていて、感度は最良好。

 視界がかすんでいるのに、いつもより周囲の気配がよく分かるという妙な矛盾。



 そんな、異様に研ぎ澄まされた状態のゼンに、

 近づいてきたアビスは言う。


「100万匹の撃破。実にお見事! では、最後の闘いといこう」



「……は? 最後の闘い? お前、さっきの巨人が100万匹目でラストって――」


「予選を通るために、君が倒さなければいけないモンスターの数は100万匹だと言ったな? あれはウソだ」


「……」


「実際には、100万と1柱を倒して、初めて合格。さあ、それでは、本当の最後。――本番といこう」



「……は? 100万と……1柱? どういう――」


 困惑しているゼンを無視して、

 アビスは、グっと全身に力を入れ、



「――超龍化」



 ハイランクの強化技を使用した。

 嵐のような虹色――

 その輝きに包まれて、


 ついには、爆発するように、

 カッッ!

 と光った直後、



「……おのが幸運に震えたまえ。今、君は『辿り着いた神』を見ている」


 膨大なオーラに包まれたアビスが悠然とそこに立っていた。


「私はエメラルドスカイアビス・リザードマン(強)。『大神級』の領域に至った奇龍人種の最終形態。その超天才型にして超強化型」


 ビリビリと、魂が痺れる覇気。


 ゼンは、息をのむ。

 純粋な恐怖に包まれた。

 心が理解した。

 目の前にいる変な色のトカゲは、間違いなく自分よりも強い。



「ハッキリ言おう。君は、驚くほど強くなった、が――私には勝てない」



 アビスは、優雅に『強さ』をふりかざした。

 速度で圧倒し、

 腕力でねじふせる。


 ――見えないし、抗えない――


「ぐぁああ!」


「君は、決して、遅くはない! だが、私からすれば、はやくもない!」


 搦め手は一切なかった。

 ただ、純粋な『強さ』だけで、ゼンを押し切る。

 絶対的な差がある『スピード』と『パワー』の前に、

 ゼンは、己の無力を痛感する事しかできない。


「くそぉ! ――一閃っ!」


「悪くない剣技だ! しかし、見飽きたな!」


 高速で飛ぶ斬撃をあっさりと処理するアビス!

 そのままの勢いで距離をつめられる。


「ぶほぉ!」


 脳が揺れるほどの腹パンをくらったゼン!

 くの字に曲がる体。

 飛び散る吐血。


 そんなゼンに、アビスは言う。


「君の一閃など、強化していなければ、ただの『訓練が足りていないB級グリムアーツ』でしかない。そんなものは私には通じない。そして、もちろん、私は君に、一閃を強化するための時間など与えない。途中で必ず潰してやる。アリア・ギアスは、積めばいいというものではない。まっすぐのタイマンで、数秒をかけた瞑想など出来る訳がない。ポーズをとってのコールなど夢のまた夢! 十秒の休憩がある死闘などない!」


 いくつかの面倒な条件を満たさなければ、『強化版の一閃』は使えない。

 だが、その面倒な条件を満たせるほど、アビスにスキはない。


 『積み技』を使って戦闘したいのであれば、最低でも『積み技を積むための戦術』を確立しておかなければいけない。

 積むための戦術がなければ、積み技は、ただの死にスキルとなる。

 当然。

 命がけの戦闘中に優しく待ってくれる相手などいないのだから。



 『空間系のスキルによるかわし』や『耐久系のスキルによる受け』など、方法は様々だが、とにかく、積み技を積むためには、そのための『起点』が必須。

 ――ちなみに、『神の領域』になると、『積み技を通すための戦術』を『潰す』ための『対策』や、潰されないようにするための『対策の対策』や、それをくつがえすための『対策の対策の対策』などが用いられてきて、結果的にはジャンケンになる。




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自作コミカライズ版35話公開中!ここから飛べます。 『センエース日本編』 また「センエースwiki」というサイトが公開されております。 そのサイトを使えば、分からない単語や概念があれば、すぐに調べられると思います。 「~ってなんだっけ?」と思った時は、ぜひ、ご利用ください(*´▽`*) センエースの熱心な読者様である燕さんが描いてくれた漫画『ゼノ・セレナーデ』はこっちから
― 新着の感想 ―
バトルヒーロー物だと相手の鉄心コールや瞑想なんかの詰み技中は傍観してなきゃいけないって暗黙の了解があるだろ!? 相手の意表を突いて死角からやるときもわざわざ叫んで位置や攻撃タイミングを知らせてガードが…
2025/10/03 09:40 焼き肉キングマン太
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