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20話 成長


 20話 成長




 ――ゼンの『剣』は、少しずつ速くなっていった。


 急激なパワーアップなどはなかった。

 少しずつ、少しずつ、

 秒を、分を、時間を飲み込んで、

 ちょっとずつ、ちょっとずつ、強くなっていく。


(……剣って……難しいな……)


 朦朧としているが、

 それでも、ゼンは剣を手放さなかった。



 休むことなく、敵は出現し続けた。



 結果――反応・反射。



 精神的疲労なんて、とっくの昔に限界を迎えている。

 正直、なぜ、まだ動けているか、ゼン自身も不思議でしょうがない。

 とにかく、苦しくて、苦しくて、苦しくて、たまらない。


 頭頂部が痺れている。

 側頭部が軋んでいる。


 息をするのもしんどくて、立っているだけで精いっぱい。

 耳元がずっとキンキン鳴っていて、視界もグニャグニャとかすんでいる。



 だが、折れなかった。

 全身全てが鉄の塊みたいになって、脳味噌が常に高圧縮されているような、

 このクソ以下の状況で、けれど、ゼンの心にはヒビすら入っていなかった。


(難しい……イヤになる……けど……)


 アホほど剣を振り続けた事で、いくつか気付いたことがあった。


 最初に『型』を導入してもらえたのが、ありがたかった。

 おかげで、体の使い方を間違えずに理解する事ができた。


 軸の支え方、重心の持っていき方、力を入れるべき瞬間、一つ一つを深く理解していく。


 その『学習』は、『一閃の強化』だけでは終わらない。

 グリムアーツ『一閃』は、極めて『単純』な剣術だが、『武道の基礎』がつまっていた。

 間合い・手の内・刃筋・呼吸法・足さばき。

 『一閃を使い続けた経験』は、ゼンの中で、『剣』と『体術』の基礎になっていく。


 ――技を知り、体を知り、心を知る。


 小脳が、『無数の理解』を重ねた。

 『鋭さ』の意味を、体が理解する。

 武の『形』が少しだけ見えてくる。



 踏み込みの角度が調節されていき、

 どんどん、全身がしなっていって、

 ゼンの剣は、果てなく冴えていく。


 『命をかけた戦い』を繰り返した事で、『闘い』の定義も見えてきた。

 互いの『死』を奪い合う、命の駆け引き。

 デジタルな『値』を持たない戦闘力の経験が、ゼンの中で血肉化していた。




(分かる……俺は、鋭くなっている……)




 怠惰に漫然と『数だけ』をこなす事による『型の歪み』も起きることなく、

 時間経過と共に、ただただ、鋭く、はやくなっていく。


 意味のある『量』が、ゼンを的確に研磨していく。


 十秒ごとに出現するモンスターは、一匹目とは比べ物にならないくらい、異常なほど強くなっていたが、魔法や一閃の性能が向上してきた結果、どうにか時間内に殺せている。



 距離を取り、分身と共に、『飛ぶ斬撃』で敵を刻み続ける。


 『分身という魔法』は、どうやらゼンに『合って』いるらしく、他の魔法よりも成長速度がはやかった。




00000000000000000000000000000000000000



 『ゼン・分身』



 [HP]      【12009/15020】

 [MP]      【5001/5330】

 [スタミナ]    【50/53】



 「攻撃力」       【83】

 「魔法攻撃力」     【35】

 「防御力」       【51】

 「魔法防御力」     【39】

 「敏捷性」       【93】

 「耐性値」       【59】

 「バリア再生力」    【257】

 「魔力回復力」     【289】

 「スタミナ回復速度」  【75】

 「反応速度」      【82】






11111111111111111111111111111111111111







 この十日間(十日間分の時間)。

 命がかかった局面で、朝から晩まで(実際の時間はほとんど経過していないが)、ひたすらに一閃を使ってきた。


 その結果、一閃の熟練度は最低の『E(型を覚えているだけ)』から『D(型を覚えているだけのヤツよりは上手に扱える)』に上がった。


(十日間、休むことなく、延々に技を使い続けて……ほんの少し上達しただけ……グリムアーツってのは、本当に厄介だな……)




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