4話 馬鹿やろうが。こんな状況で、『道理の通っていない逆恨み』をしている場合かよ。
4話 馬鹿やろうが。こんな状況で、『道理の通っていない逆恨み』をしている場合かよ。
中学の時に上位ヤンキーグループに属していて、性格が軽くてコミュ力が高くて、それなりに勉強もできて、運動もそこそこ。顔が良いわけではないが、決してバカではなく、いつも小奇麗にしていて、普通に清潔感があるし、筋トレもちょっとしているから、細マッチョで、身長も171ぐらいで、平均よりはギリ高い。
全体的に悪くはないし、間違いなく『マシな方』……
だけれど……うん……正直、『モブ感』はぬぐえない。
どこまで行っても『マシなモブ』でしかない感じ。
漫画でよくみる『ヒロインに冷たくあしらわれるモブ陽キャ』。
それ以上でも、それ以下でもない。
その現実は、音文自身が誰よりも理解している。
そして、『そんな自分の現状が許せない』とも思っている。
表面には絶対に出さないが、心の中では、
『俺は特別だから、もっと評価してくれ』
と、常に、そんな事を想いながら生きている。
だが、誰も、欲しい評価はくれない。
当然。
だって、実際のところは、別に特別じゃないから。
少なくとも、『第一アルファにいる時の彼』は何一つとして『特別』じゃなかった。
かるくサイコなところはあるが、しかし、それは、人格に欠陥があるだけで、『特別な資質』などではない。
それが彼の現実。
それを、自覚し認識し理解もしている……けれど、『特別である』と評価してもらいたいというワガママが消えない。
だから、強くブランドを求める。
学力テスト1位というブランド。
偏差値上位大学というブランド。
ホワイト大企業というブランド。
『見栄えをよくするためのアクセサリ』を必死になって求める。
それを邪魔するやつが、憎くてたまらない。
「せぇえええええん!!!」
怒りのままに、突進してくる音文。
星霜幽珀斗など目もくれず、ただひたすらに、センだけをころそうと突貫。
そのムーブに対して、センは、ドン引きの顔で、
「嘘やぁああん?!」
慌てて、音文の特攻を回避しようと必死。
腕だけで必死に這いずるセンに、
音文は容赦なく、
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
『虫ゴリマッチョ』の太い拳を、
センの顔面に叩き込む。
「ぐっへぇえええええええええええええええええええっ!!」
豪快に吹っ飛ばされるセン。
しっかりと砕けていく顎。
両足切断に、顔面崩壊と、
散々な状態のセン。
「く、クソバカ野郎が……こんな状況で、『道理の通っていない逆恨み』をしている場合かよ……学校のテストがどうとか……バカか……」
だるそうに、そう吐き捨てるセン。
『塾のテストの件を、トウシに散々ブチブチ言ってきたこと』は忘れているので、『自分の事を棚に置いている』という感覚すらない。
まっすぐに、音文に対して、異常性と嫌悪感を魅せる。
……音文からの追撃に備えて、体をダンゴムシスタイルで丸めていくセン。
……が、一向に追撃が来ないので、チラっと、音文の方に視線を向けてみると、『虫音文』は、オーラと魔力を全身に充満させながら、星霜幽珀斗を睨みつけていた。




