2話 トラックにはねられて、地獄に転移して、タイムリープを繰り返していたと思ったら、絶体絶命になって、同級生を召喚して助けを求めたら……
2話 トラックにはねられて、地獄に転移して、タイムリープを繰り返していたと思ったら、絶体絶命になって、同級生を召喚して助けを求めたら……
「音文、元気に吹っ飛ばされているとこ悪いんだけど、そろそろ意識朦朧としてきたから、早めに助けてくれる? ったく、いつまでモタモタと遊んでいやがるんだか……そういうとこだぞ。……音文? おーい、あれ? もしかして気絶した? あーあ……やっぱダメか。もしかしたらって期待したんだけど……まあ、無理だろうな……そりゃそうだ……うん……」
センはタメ息を一つついて、
「結局、俺がやるしかないか……足切らなきゃよかった……無駄な一幕だったわぁ……」
しんどそうに、腕だけで、体を引き摺りながら、星霜幽珀斗に挑もうとするセン。
「セイソウを殺し、音文を日本に返す……ミッション了解……」
自分の仕事を受け止めたセンは、
「ったく、このクソ忙しい時に、余計な仕事増やしやがって……まあ、増やしたの俺だけど……」
ぶつぶつ言いながら、センは、
どうすれば、音文を守れるか、
それだけを必死に考えていた。
……と、
その時だった。
「ん?」
センに電流走る。
奇妙な違和感。
少しだけ明確な悪寒。
「なんだ……」
不思議に思っていると、
「……音文?」
視線の先で転がっている音文の体が小刻みに震えていた。
次第にバイブレーションが増大していく。
そして、音文は、
『気絶中』という『明瞭な無意識の中』で、
「プラチナ……スペシャル……っ」
革命を口にした。
……その直後のこと、
音文の体に変化が起きた。
変化というか……変身だった。
あえて、『変態』と言ってもいいかもしれない。
『hentai』の方ではなく『metamorphose』の方の変態。
「おいおい、音文さん……どうしたん?」
コンマ数秒という短い時間の中で、
音文の全身が、
……『虫型モンスター』に変わっていた。
「おっと……マジかよ、音文さん……え? これ、どういう不条理? もう、さっぱりわからんのだが……」
トラックにはねられて、エグいモンスター地獄に転移して、タイムリープを繰り返していたと思ったら、罠にかかって、絶体絶命になって、同級生を召喚して助けを求めたら、その同級生が秒で気絶して……けど、気づいたら、その同級生が虫に変身していましたとさ。めでたし、めでたし。
センは、ぽりぽりと頬をかきながら、
「んー……『夢じゃない』と思っていたが……やっぱ夢なのかな? この無茶苦茶感は、夢特有のアレだなぁ……超展開どころの騒ぎじゃねぇぞ。シュールな不条理モノにも限度ってものがあるだろうに。あまりにも、シナリオがバグりすぎている……」
などとつぶやいていると、
そこで、『マッシブー◯ンみたいな、ゴリマッチョ系の人型虫モンスター』の姿に変身した音文が、
「にくい……にくい……にくい……」
などと、奇怪な声で、ぶつぶつ言いだした。
「セン……お前が憎い……殺したいぃ……」
明確な殺気を向けられたセンは、
「はぁ? いや、殺意を向ける対象、間違っているぞ。確かに、お前をここに召喚したのは俺だから、『俺を恨む権利がない』とは言わないが、しかし、お前を呼んだのは意図的ではないし、それに、今は、俺をどうこうより、セイソウさんの方を先に処理すべきで――」




