最終話 第一アルファ人。それは、間違いなく、全世界最高のポテンシャルを誇る最強種族。
最終話 第一アルファ人。それは、間違いなく、全世界最高のポテンシャルを誇る最強種族。
「あ、やべ……立ちくらみ? うわ、ウザ……」
フラつく体。痛む頭。そして、脳内に響く幻聴。
――無茶を……んだがなぁ……あそこにいる……モン……は弱くて、でも、セイソウなんと……、ご都合……っぱいの誰かし……頼む……来てくれ!!
キンキンする耳。なぜか、その幻聴は、クラスメイトの閃の声に似ていた。
そして、
「ぁ……っ」
ついには、意識が消失。
――『センエースの呼び声』に導かれ、
異世界へと転移する。
音文叉帝の、数奇な異世界転移物語が、今幕をあける。
★
「――無茶をいうようでなんだがなぁ……あそこにいるセイソウなんとかってモンスターよりは弱くて、でも、セイソウなんとかを殺せる、ご都合主義でいっぱいの誰かしらよ……頼むから、来てくれ!!」
必死に懇願しながら、召喚を実行するセン。
すると、その結果、
「……ん?」
センの目の前に、
一人の男が現れた。
センと同じぐらいの年齢。
背格好も似ていて、
何より、同じ服装だった。
センは見慣れている、東高校の制服。
「音文……?」
センが、そう呟くと、
彼――音文叉帝は、
センの方に視線を向けて、
「……閃……? え、これ、どういう状況? ってか、おまえ、足ないじゃん……ぐろ……え、まじで、やっば! なにこれ?! 夢?! 夢だよな?! 絶対に夢であることは間違いないんだが、そうじゃない確率が1%ぐらいはある雰囲気で怖いんだが?!」
彼は、センのクラスメイト。
つまり、第一アルファ人であり、『種族単位での潜在能力は世界最高』である。
それは間違いない事実なのだが、異世界転移したばかりの今、センの手助けになるかというと……
「音文、今は夢じゃねぇ。そして、俺は、今、ご覧の有り様だ。というわけで助けて欲しいんだけど、いけそう?」
「いけそうってなにが?!」
「あそこにいる、最高位モンスターを倒して、俺を華麗に救い散らかすこと……可能?」
「可能なわけねぇだろ。てか、今の俺は、全力で助けてほしい側なんだよ。え、帰れる? ちゃんと、俺、今日、家に帰れる?! なぁ!」
「落ち着け、音文。お前は誇り高き第一アルファ人の中でも、運命に選ばれしスーパーエリートだ。たかが、『セイソウなんとか』ごときに負けるわけがない。知らんけど」
「第一アル……え、なんて?! お前が言っていること、マジでわかんねぇんだけど、これは俺が悪いのか?!」
「とにかく戦え! 大丈夫! お前なら勝てる! 確かお前、『中学の時、蝉原のチームで幹部やってた』ってヤンチャ自慢してただろ!」
「会計係としてなぁ!! エクセルと会計ソフトが使えたから高待遇を受けただけで、喧嘩はクソ弱いんだよぉ!」
ワーワーと言い合っている間、
星霜幽珀斗は、黙って、
二人の様子を見守っていた。
まるで、最初からそうプログラミングされているかのように。
と、そこで、
音文が、頭を抱えて、
「夢……絶対に夢だ……こんな、わけわかんねぇこと、夢にきまってる……もう、いい、起きろ、起きろ、起きろ……っ」
いやぁ、完璧な最終回でしたね、
全ての伏線が回収されて、
全てのキャラクターが昇華され、
何もかもが完璧な、理想の最終回だったんじゃないでしょうか。
センエースの物語も、これで終わりだと思うと、
寂しいですし、名残おしいですね。
しかし、何事にも終わりはくるもの。
それが世の常。
それでは、皆様、また会う日まで!




