127話 内容が薄すぎるとか言われたけどさぁ……あいつの行動が薄すぎるんだから、仕方ねぇじゃん。
本日の3話目です。
まあ、実質2話みたいなものですが……
今日は遅くなる可能性があるので、朝に3話投稿しました。
127話 内容が薄すぎるとか言われたけどさぁ……あいつの行動が薄すぎるんだから、仕方ねぇじゃん。
「あのさぁ……そもそも、なんで、閃の観察日記とかを、お前にメールしないとダメなんだ? メール一回だけで5000円くれるから、文句とかないんだけど……理由も、出来れば教えてくれない? 閃ってなんかヤバいやつなの? いや、まあ、ヤバイやつではあるんだけど……発言がラリっているだけで、普通の凡人なんだけど」
「あなたには、その情報にアクセスする権限がない」
「……大げさだねぇ、スパイ映画かよ。……なに、あいつ、実はサイコテロリストか何かなの?」
「知る権利がないと言っている」
「……はいはい。ところで、久剣さぁ、俺と付き合わない? 俺達、相性いいと思うよ。かたいお前と、軽い俺。正反対でひかれあう。みたいな」
と、チョケていく音文に、
久剣は、グっと眉間にしわをよせて、かつ、巻き舌で、
「ごちゃごちゃ言わず、閃壱番に関する情報を教えろ」
「……こっわい顔」
音文は、タメ息をはさんで、
「内容が薄すぎるとか言われたけどさぁ……あいつの行動が薄すぎるんだから、仕方ねぇじゃん。あいつ、思想とか発言はヤバいけど、やっていることは、朝から晩まで、スマホとにらめっこしているだけ。ずーっと、異世界モノのウェブ小説を読んでるだけ。それ以外、マジで何もしてねぇ。性格が『重度の変態』ってだけで、やっていることはただの陰キャ」
「……」
「あのさぁ……マジで、ちょっとぐらい、『なんであいつを監視しているのか』……教えてくれない? そこが分かれば、監視の質も上がると思うよ」
「……」
「はいはい、わかった、わかった。もう聞かねぇよ」
両手をあげて降参のポーズをとる音文。
「あ、でも、せめて、これだけは聞かせて」
「……なに?」
「本当に俺とは付き合えない? 俺、けっこう、スペック高いけど? 今のところ、学歴はカスだけど、一応、最終学歴は、同志社か立命館にするつもりなんだ。で、大学入った直後から任天堂にターゲットを絞った就活を頑張るつもり。あらゆる手を使って、どうにか、超大手に入ってみせる。大手に入るだけで終わりじゃない。俺はコミュ力があって、口も頭もそこそこ回って、体力もそこそこ。病気とか障害とかなし。……こういう人材が、社会人になってからは、けっこう、出世すんのよ。どう? なかなかの優良物件だと思うけどなぁ」
音文のプレゼンに対し、
久剣は、
「好きに頑張れ」
まったく相手にしていない発言を残して、
その場を後にした。
残された音文は、
「つまんねぇリアクションだな。程度が知れるぜ」
と、吐き捨てながら、音文は、足元で蠢いているアリを踏みつぶした。
ぐりぐり、ぐりぐりと、かかとで何度も踏みつけて、命の終わりをかみしめる。
アリの命じゃ、ショボすぎて、この感情はちっとも収まらない。
近く花壇の花に、テントウムシが止まっていたので、
それを指で捕まえてブチっと潰した。
アリよりはマシだが、この程度で気は晴れない。




