126話 運命論のカフカ。
本日の2話目です。
126話 運命論のカフカ。
「つかさ、反町。タスキ買いにいくの、俺に決まらなかったっけ? なんで、閃に行かせた? どういういやがらせ?」
「音文。貴様ごときにそんな大役を任せるワケないだろ。コスモゾーンの選択をナメるな。運命論の過負荷に耐えうるのは、舞い散る閃光のみ」
「閃といい、お前といい……このクラス、電波系が多いなぁ……」
ため息交じりにそう言ってから、
「まあ、俺としては、仕事が一個減るから、別に文句はねぇんだけどな……」
などと言いながら、スマホをポケットにしまうと、
「ところで、お前、さっき『みんなとカラオケ』とか言っていたけど、誰と行くんだ?」
「この私が、貴様らのような『低次生物』と『同じ目線で遊興にふける』など、ありえるわけがない」
「……閃って、普通だったら、相当ヤバいやつな気がするんだけど、お前がいるせいで、そこまで変な奴に見えないんだよなぁ……他にも、このクラス、何人か、変態がいるから、閃の変態性が紛れてんだよ……得してるわぁ、あいつ……」
実のところ、このクラスは、閃と反町以外にも、頭おかしいやつが何人か混じっている。
「田中とかも、実際、相当、イカれているしなぁ……」
チラっと、視線を向けた先にいる男子高校生、
田中未来流。
基本、目がイっちゃっていて、常に、片目にスカウターっぽいものを装着している、
なんとも、未来人っぽい風貌が特徴の変態。
「なぁ、田中」
「なんでしょう?」
「お前は、なんで、この高校に入ったんだっけ?」
「明けの明星が、次元の壁を超えて、オリジナルを殺しにくる可能性があったため、監視と護衛のために派遣されたエージェントが私です。コールサインは『ミカエル』。『危険思想の集合体』であり『光を掲げる者』でもあるルシファーは、『全てを包み込む光の王』に執着しています。この世界は、その危険性を、まるで理解していません。愚かしい話です」
「電波なヤバさも、ここまでくると、いっそ清々しいもんなぁ……そして、こんだけヤバいのに、でも、比べたら、閃の方が、やっぱり上に思えるっていう、閃の卓越した純度の高いヤバさね。もう、ほんと、すげぇわ、色々な意味で」
半笑いでそう言ってから、音文は、
「……さて、そろそろ帰るか」
アクビをしつつ、カバンを肩に背負って、教室を出た。
★
音文が校舎から出て、校門に向かっていたところ、
「音文」
と、背後から声をかけられた。
聞き覚えのある女子の声。
振り返ると、けっこうな美少女がそこに立っていた。
「ん、ぁあ……久剣か……なに?」
彼女は久剣一美。
隣のクラスの女子で、
この学校の歴史上、最高位の美少女という評価が下されている、
正真正銘の美少女。
「今日の閃壱番はどうだった?」
「……さっき、メールしたけど?」
「内容が薄すぎる。もう少し、詳しく」
「あのさぁ……そもそも、なんで、閃の観察日記とかを、お前にメールしないとダメなんだ? メール一回だけで5000円くれるから、文句とかないんだけど……理由も、出来れば教えてくれない? 閃ってなんかヤバいやつなの? いや、まあ、ヤバイやつではあるんだけど……発言がラリっているだけで、普通の凡人なんだけど」




