115話 いでよ! 今の俺に召喚可能な、最高位のモンスターよ!
115話 いでよ! 今の俺に召喚可能な、最高位のモンスターよ!
「く、くそぉおおお!! 閃拳!!」
磨き抜いた拳で、一発逆転を夢見るものの、はっきり言って、お話にならない。
そこそこのダメージにはなる。『1ダメにもならない』とか、そんな悲惨な事にはならない。しかし、禍羅魅神鬼は、『センの拳が、それなりに重たい』ということを、戦いの中で、即座に理解してしまったため、途中から、上手に受け流すようになってきた。
センエースの拳は、『覚悟とオーラ』だけは一丁前だが、パワーとスピードが足りないので、禍羅魅神鬼がその気になれば、余裕で受け流せる。
閃拳を受け流しながら、禍羅魅神鬼は、
「信じられない頑丈さ、そして、しぶとさ……その点に関してだけは認めよう。貴様の生命力は本物だ。また、拳の重たさも認めよう。そのゴミみたいな肉体で、よくもまあ、それだけの出力を出せるものだ。感心する。……しかし、それだけだ。もっと言えば、だからどうした? 無意味」
そう言いながら、禍羅魅神鬼は、
センの腹部を手刀で、グザリッと、貫く。
まるで、2◯号に腹を裂かれたヤム◯ャ。
「ぐふっ……」
明確な死を前にしたセンは、
霞む意識の中で、
「い、今の俺ごときじゃあ……余裕で完封か……やるじゃねぇか……だが……調子には乗るなよ……俺より強い程度の雑魚が……俺に勝てるわけねぇんだからよぉ……」
最後にそう言い捨ててから、
センは、最初から右の拳にかたく握りしめていたカギを、より強く、ぎゅっと握りしめ、
「俺はまだ頑張れる」
いつもの宣言で、今回の幕を引いた。
★
目が覚めた時、
センは、
「ん……」
見知らぬ天井を見つめていた。
真っ白な空間。
体を起こしたセンは、
首をゴキゴキっ鳴らしつつ、
「スライム、トーキ、カマキリを全員召喚して、総力戦を挑んでも……まあ、無理だな。高次の戦いだと数は無意味だよ、兄貴……三匹のアリが、いくら力をつくしても恐竜には勝てないって」
頭おかしい人みたいに、ぶつぶつ言いながら、センは、親指を噛んだ。
溢れた血で魔法陣を描き、
髪の毛をセットすると、
「エロイムエッサイム、エロイムエッサイム、我は求め訴えたり」
と、前置きとなる呪文を唱えてから、
「いでよ! 今の俺に召喚可能な、最高位のモンスターよ!」
戦力になり得るモンスターを呼び出そうとしたセン。
その結果、
「おお……なんか、強そうじゃね? ブラマジぐらいの強さはありそうじゃね?」
現れたのは、
かなり強そうな星霊種。
「お前なら、喋ることもできるよな? 自己紹介、頼むぜ」
「最上級星霊種のエルダーワンダーナイトでございます。よろしくお願いします、マスター」
「最上級! いいねぇ! その礼儀正しい感じも、気持ちがいい! そして、清々しい! フゥウッ!!」
『エルダーワンダーナイト』
[HP] 【C】
[MP] 【C−】
「攻撃力」 【D+】
「魔法攻撃力」 【C】
「防御力」 【C+】
「魔法防御力」 【C+】
「敏捷性」 【D−】
「耐性値」 【D】
特に際立った弱点はなく、回復魔法も攻撃魔法もそれなりのクオリティで使える万能モンスター。
特化した部分は皆無だが、ここまでバランスがいいと、もはや、『特化したバランス』と言ってもいいかしれない。
「礼儀正しいだけじゃなく、それなりに強そうじゃねぇか。オラ、ワクワクしてきたぞ。……いっちょ、戦ってみっか」




