111話 でかいカマキリが可愛く思えてくるセンエース。
111話 でかいカマキリが可愛く思えてくるセンエース。
首を横に振る闘鬼の姿を見て、センはボソっとつぶやく。
「なるほど。……『俺の言っていること』は、なんとかわかるが、『流暢に会話をする機能』はない。名前をいうぐらいでギリ……そういう知性レベルって感じか。禍羅魅神鬼ぐらいになると、流暢に会話できるけど、お前やスライムやカマキリぐらいのモンスターだと、『意思疎通をはかるぐらいが限界』と。なるほど、なるほど」
だんだんと、世界観を掴み始めるセン。
「禍羅魅神鬼は大神級って言っていたよなぁ……たぶん、一番上だよなぁ……まあ、それより上があってもおかしくはねぇけど……で、トーキ、お前はどのぐらいだろうなぁ……真ん中より上かなぁ……カマキリは……さすがに、真ん中より上ってことはないだろうなぁ……それとも、この感じで、めちゃくちゃランクが高いとか……まあ、絶対にないとは言えんわなぁ。弱そうに見えて実は強いってパターンは、『なろう』じゃよくあること」
ネオカマキリの頭をなでながらそう言うセン。
ネオカマキリは嬉しそうに、センの手に頭をすりすりしている。
「形状的には絶対にキモいはずなんだが……なんか慣れてきたら、普通に可愛く見えてきたな……愛着って概念は怖いねぇ」
そんなことをつぶやいてから、
センは、ネオカマキリの頭から手を離し、
ネオと闘鬼の両方に視線を送り、
「トーキ、カマキリ、お前らに命令だ。刀とカマはなしで、俺と、本気で殴り合え。急所をバチコリいかれたら死ぬから、そこの配慮だけよろしく。それ以外で遠慮はなしだ。殴り殺すぐらいの気持ちでこい。ただし、本気では殺すな。まだ死ねない。その辺、いい塩梅でよろしく。というわけで……さあ、行くぞ!」
注文の多い命令をしてから、
センは、拳を固く握りしめて、
トーキとネオカマキリに殴りかかる。
召喚獣トーキとネオカマキリは、召喚主の命令に従い、センと本気で殴り合った。
トーキは剣を封じて、ネオカマキリは、刃をセンに向けないよう注意しつつ、
ボコボコと、トーキ&ネオカマキリと殴り合ったことで、センは、理解する。
(絶対に勝てんな……どっちも普通に強ぇ……)
トーキの存在値は、およそ50。
ネオカマキリの方は、だいたい30。
対してセンは、5あるかないか。
トーキに殴られるたび、
その箇所の骨がバキバキにへし折れて、
肉が裂け、血が溢れる。
ネオカマキリも、なかなかの筋力であり、もし、カマの方を使われていたら、センの体は余裕で真っ二つにされていただろう。
どうにか、防御のオーラを集中させて、少しでもダメージを軽減させようとしているのだが、相手の火力が高すぎるし、センのオーラ流動が下手すぎるので、全然、ダメージコントロールができない。
「くそがぁ! もう一丁ぉ!! まだまだ終わると思うなよぉ!」
センの根性がバグっているので、
どうにか『戦いの体』をなしているが、
一般人であれば、最初の一発により骨を砕かれた時点で、
完璧に戦意を喪失……あるいは気絶しているところ。




