108話 こいつ……動くぞ……オヤジが熱中するわけだ……
108話 こいつ……動くぞ……オヤジが熱中するわけだ……
「じゃあ、スラ坊、今のお前に可能な『何かしら一番良い感じの攻撃』をぶちかませ!」
と、あまりにもフワフワしすぎている命令を出すセンさん。
その命令を受け止めたスライムは、口をグワっと開けて、
「異次元砲」
なかなか強大な火力の照射を放った。これには、さすがのセンさんもビックリ。
まさか、スライムに、それほどの攻撃手段があるとは思っていなかったから。
スライムの照射を受けた鬼は、もちろん余裕で生きているが、どうやら、普通に、そこそこのダメージを受けた模様で、
「むぅ……たかがスライムごときがF魔法を使ってくるとは驚いたな。魔力量が少なすぎるから、大したダメージにはならないとはいえ……」
100あったHPが80ぐらいになった感じ。
大神級相手に、それだけのダメージを与えたのだから大したもの。
ちなみに、異次元砲を放ったスライムは、どうやら、すべての力を使い果たしたようで、蒸発するようにブシュウゥウと、解けていった。
「治癒ができて、火が出せて、かめは◯波が撃てるスライムか……かめは◯波に関しては一発しか使えないってのが、ちょいとネックだが、もろもろ使い所を間違えなければ、十分戦力になってくれそうだな。よきかな!」
と、今回の収穫について整理するセン。
この狂った状況にも、すっかり慣れたセンは、鍵を右手に握り込んで、
「おい、そこの鬼。ちょっと俺と殴り合えよ。あ、一応言っておくが、一瞬で俺を殺すとか、そういうサムい真似すんなよ。ちゃんと俺をじわじわと、なぶり殺せ。いいな」
と、だいぶマゾな注文をつけてから、
センは禍羅魅神鬼に殴りかかる。
言われるまでもなく、禍羅魅神鬼は、雑魚すぎるセンを弄んだ。
子供が虫をいじくり回すように。
「うぶっ……」
ぐちゃぐちゃにされたセンは、
禍羅魅神鬼との戦いの中で、
一つの真理を見つけた。
(オーラを……うまく使えば……)
戦いの中で、センは、
自分や、鬼の体を覆っている『謎のエネルギー』があることに気づいた。
それを、オーラと名づけたのは、漫画知識によるもの。
そして、『これはオーラだろう』と思った予測は正解で、センが感じている『その不思議エネルギー』は、正式にオーラと呼ばれているもの。
センは、
(…………『こいつ(オーラ)』……動くぞ……)
自分の体の中にも体表にも、オーラが存在することに気づき、そして、それらが意思の力によって、ある程度、自由に動かせると言うことにも気づいた。
(オーラは、多分、ブースター……)
センは、自分の右手に、オーラを集中させていく。
なかなか、うまいこと動かせなくてもどかしい。
(ふぅう……ふぅう……)
持ち前の集中力を暴走させて、
センは、右手に、ありったけのオーラを集めることに成功した。
センのその『無駄な抵抗』を、鬼は、『でっかい砂糖を運んでいるアリ』でも見ているかのような、興味本位以外の何ものでもない目で見守っていた。
禍羅魅神鬼は、ボソっと、
「なかなか悪くない流動だ。しかし、まさか、それで私を殴ればダメージをあたえられる、などと夢は見ていないだろうな。一応、言っておくが――」
「うるせぇよ」
センは、禍羅魅神鬼の言葉を遮って、
「今、お前に効くかどうかなんざ、どうでもいい……これは、最初の一歩……大事なことは踏み出せるかどうかだけ!!」




