107話 まあまあ優秀なスラ坊。
107話 まあまあ優秀なスラ坊。
「喋れねぇのに、魔法の詠唱だけは綺麗に発音できるとか、どういう系統のご都合主義? 発声機能があるなら喋れるくない? ……とか思わなくもないけど、今はまあ、目を瞑ってやるよ。普通に魔法を使えるとか、なかなかイカしたスラだぜ。褒めてつかわす。……けど、ランク1かぁ……たぶん、一番弱い魔法だよなぁ……ナンバーワンの1じゃなくて、レベル1の方の1だろうなぁ……」
そこで、センは、アストラルマジシャンやバフメットが使っていた魔法を思い出す。
「確か、あのブラマジが9ぐらいの魔法を使っていて、あのバフォメット系悪魔が5か6ぐらいの魔法を使っていたよなぁ……もし、この世界の魔法のランクが、よくある十段階式だったとしたら……ウチのスラはだいぶゴミで、あのブラマジや悪魔はかなりのバケモノ。そして、それを瞬殺したゴリラは、えぐい怪物で、そのゴリラを消し去った鬼はもっとエグい異次元ってことになるな……うーむ……この世界の力のバランス、だいぶ、バグっているっぽいな」
世界観を掴むのに苦労しているセンエース。
『全ての要素が、あまりにもぶっ飛びすぎているこの世界』を、初見さんが、すぐに網羅することは不可能。
「てか、足をお供えしたら、無敵のゴリラが出てくるのに、髪の毛だとレベル1のスライムとか……なんで、そんな差があるかね……」
文句を言いながらも、センは、
「魔法は微妙だけど、耐性とか、火力は一級って可能性もあるか……」
と考えて、スライムと一緒に外に出て、
宝箱を開けて、ナイフと盾を確保すると、
とりあえず、腹を切って、鍵を回収し、
「スラ坊、回復魔法は使えるか?」
そう問いかけると、
スライムは、センの腹にビタッとしがみつき、
「治癒ランク1」
そう唱えると、
スライムの全身がパァっと淡く光り、
腹の傷が見事に癒える。
「オッケェ、いいねぇ! やるじゃねぇか、スラ坊。回復魔法も使えるとは見上げたスラだ。……もっと大きな傷だとどうなるかわからんが、ナイフの小さな刺し傷ぐらいなら、余裕で完治できるっぽいな。これで、大体の目処はたった」
などと、スライムの地味な優秀さにホクホクしていると、
いつも通り、カラミシンキさんが登場。
センは、
「次は物理火力を見せてもらおうか」
そう言ってから、鬼を指差し、
「ゆけ、スラ坊! 体当たり!!」
命令に従い、スライムは、鬼に向かって突撃をかました。
プルプルボディは、
鬼の胸部でポヨンと跳ねる。
どれだけのヒイキ目でみても、『ダメージを与えている』と認識することは不可能な有様だった。
「物理の火力はなし……と。了解、了解」
いったん、状況を受け止めてから、
「じゃあ、スラ坊、今のお前に可能な『何かしら一番良い感じの攻撃』をぶちかませ!」
と、あまりにもフワフワしすぎている命令を出すセンさん。
その命令を受け止めたスライムは、
口をグワっと開けて、
「異次元砲」
なかなか強大な火力の照射を放った。
これには、さすがのセンさんもビックリ。




