106話 絶対に許さん……許さんぞ……必ず見つけ出して、じわじわと、なぶり殺しにしてくれる。
106話 絶対に許さん……許さんぞ……必ず見つけ出して、じわじわと、なぶり殺しにしてくれる。
見知らぬ天井を見つめていたセン。
真っ白な空間で一人、体を起こしたセンは、
ボソっと、
「おそらくだが、あのゴリラに頼るだけじゃ……事態は好転しねぇな……たぶん、あのゴリラが絡むと、鬼はバグって、処理できなくなる……あの鬼を殺すなら、ゴリラなしでヤラねぇと……」
センは、これまでのあれこれから、
己の状況に対して、
次のように結論づけた。
「多分、『誰か』が、俺に、『何か』をさせようとしている。重大な仕事をやらせようとしているのか、それとも、俺を使って遊んでいるだけか知らんけど……間違いなく、俺をコマにしている『誰か』は存在する」
自分の中の結論と向き合うセン。
ぐっと歯噛みしながら、
「ど、どこのどいつか知らんが、絶対に許さん……許さんぞ……必ず見つけ出して、じわじわと、なぶり殺しにしてくれる」
覚悟を決めたセンは、
「……『どこかのクズを、この手でなぶり殺す』のが最終目標……となると、俺自身の戦闘力をあげる必要があるわけだが……今のままじゃ、いつまで経っても、ここから逃げ出すことすら叶わない……」
前提一つ一つと向き合ってから、
最終結論を出す。
「まずはここを出るための力を得る。で、そのあとは、俺自身を徹底的に鍛え上げて、俺に上等をかましてきた誰かさんに、ビシッとジャーマン決めてやる」
結論が出ると、センは、
「今の俺の武器は、見様見真似の召喚術だけ。だいぶしょっぱいが……まあ、八方塞がりよりは遥かにマシかな」
などと呟きつつ、
センは、ガリっと親指を噛み締めて血を流す。
歯で足を切断することはできないが、指から血を出すぐらいは、造作もない。
グジュグジュと、にぶく響く痛みに耐えながら、センは、地面にジオメトリを描くと、
「とりあえず、髪の毛で試してみましょうかねぇ」
ブチっと、まあまあ豪快に引きちぎった髪の毛数十本を、ジオメトリの上に置くと、
「エロイムエッサイム、エロイムエッサイム、我は求め訴えたり」
ネタではなく真剣に、天に祈りながら、
自分が知っている召喚系の呪文を唱えてから、
「いでよ! 何かしら、召喚!!」
なんでもいいからとりあえず召喚しようとしたセン。
『何かしら召喚』と言う、あまりにもひどいランダム召喚……だが、魔法陣は、センの声に応えてくれた。
髪の毛を媒体に、召喚されたのは、
「ぴぎー」
『ナメ◯ク産ドラゴンボール』ぐらいの、ちょっと大きなサイズのスライム。
「スライムかぁ……どうだろうなぁ……もちろん、俺も『なろうの読み手』だから、『スライムがぶっちぎり最強の作品』があることは知っているが……たいがいの作品でスライムはナンバーワンの雑魚なんだよなぁ……」
などとぶつぶつ言いながら、
センは、スライムの頭部と思しき箇所を、なでて、
「会話できるか?」
と尋ねると、
スライムは、プルプルっと全身を左右に振って、否定の意を示した。
「オーケー、言語は無理でも、コミュニケーションはいけるっぽいな。ちなみに、魔法とか使える?」
と尋ねると、
「ぴぎー」
と元気よく返事をして、
ガバっと、口を開いた。
そして、
「火球ランク1」
と発音よく唱えると、
火の玉が、
ボッと発射された。
それをみたセンは、
「喋れねぇのに、魔法の詠唱だけは綺麗に発音できるとか、どういう系統のご都合主義? 発声機能があるなら喋れるくない? ……とか思わなくもないけど、今はまあ、目を瞑ってやるよ。普通に魔法を使えるとか、なかなかイカしたスラだぜ。褒めてつかわす。……けど、ランク1かぁ……たぶん、一番弱い魔法だよなぁ……ナンバーワンの1じゃなくて、レベル1の方の1だろうなぁ……」




