105話 レッドカード。
105話 レッドカード。
完全に完成する前に破壊しようと、
全力の照射を放ったが、
「グッ! いかん! 手応えがまったくない!!! ワシの全力を超えるというのか! まったくいかれているな! ――おい、小僧!!」
呼ばれたセンは、
「え、あ、はい!」
「全速力で逃げろ! そして、この世界のどこかにいる、UV1、もしくは、アモンという名前の者に、この緊急事態を伝えろ! わかったか!」
「いや、あの、根本、俺は、この遺跡から出られないから、あんたを頼ろうとしたわけで――」
センの悲痛の叫びが終わる前に、
光の鎧を纏っている禍羅魅神鬼が、
カンツの目の前まで瞬間移動してきて、
カンツの胸に、自身の両手をあてて、
「――『ファントムレッドカード』――」
ナニが何だか『よくわからない技』を使った。
すると、
「ぐぬぅうううううう!」
カンツの背後に、
真っ赤なブラックホールみたいな何かが出現し、
カンツを引き摺り込もうとしている。
「ぐぬぬぬぬぬ!!!」
必死に踏ん張っているカンツだが、
どうやら、吸引力がバグレベルらしく、
ついには、
「うぉおおおおおおっ!!」
赤いブラックホールに吸い込まれてしまった。
その光景を目の当たりにしたセンは、
冷や汗ダラダラで、
「待って! カンツさん! 置いてかないで! いっそ、俺も連れてって!」
と、自分自身も、赤いブラックホールに飲み込まれにいった……が、
「俺はシカトかい! くそったれぇ!」
センにはなんの効果も及ぼさず、
カンツを飲み込んだ5秒後に、
赤いブラックホールは消えてしまった。
残されたセンは、
背後に立っている、
『光の鎧を纏う禍羅魅神鬼』に、
そっと視線を送る。
別に、『特別な目』がなくともわかる。
あの鬼は異常。
神の領域にある化け物。
センは、
「い、いやぁ、ははは、まいった、まいった」
引きつった顔で、頭をかきながら、笑って誤魔化すぐらいしか、できることがなかった。
すると、
禍羅魅神鬼が、
「私を従えたければ、自力で私を倒して見せろ。さあ、勇気をもって、かかってくるがいい」
と、無茶なことを言ってきた。
センは渋い顔で、
「……そ、それができるなら、わざわざ、何度も、自分の足を切ったりしねぇんだよ」
と、ごもっともな言葉を投げ捨てる。
センの反論など、
どうやら、禍羅魅神鬼は、まったく聞いていないようで、
「私を従えたければ、自力で私を倒して見せろ。さあ、勇気をもって――」
「わかった、わかった。会話パターンの少ないRPGみたいな連呼はそこまでだ」
そう吐き捨ててから、
センは、
「……正直、現状、一ミリも勝てる気しねぇが……こんなにも、何もできずに振り回されっぱなしなのは腹立つから、お前を殺せるように努力してみることにするぜ」
そう言うと、
ナイフで自分の腹を刺して、
鍵を取り出すと、
「ぐ……ぐぅ……準備を整えて、いつか必ず殺しに来てやる。……それまで首を洗って待ってろ。……じゃあな、クソッタレ」
最後に、中指を立てて、そう言うと、
センは、
「俺はまだ頑張れる」
過去へと戻る。
★
目が覚めた時、
センは、
「ん……」
見知らぬ天井を見つめていた。
真っ白な空間。
体を起こしたセンは、
「おそらくだが、あのゴリラに頼るだけじゃ……事態は好転しねぇな……たぶん、あのゴリラが絡むと、鬼はバグって、処理できなくなる……あの鬼を殺すなら、ゴリラなしでヤラねぇと……」




