101話 無敵ゴリラ、召喚!
101話 無敵ゴリラ、召喚!
「む……無敵ゴリラ、召喚!!」
どうにか、必死になって、無敵ゴリラを召喚しようとするが、
「マッスルゴリラ、召喚! ゴリゴリゴリラ、召喚! くっそ、名前、聞いときゃよかった! 何やってんだ、俺ぇえええ!! ……あっ……」
出血過多でフラつくセン。
切断された足の激痛にはなんとか耐えているが、気絶しそうになる頭を支え切るのが難しい……
そんなセンの背後から、
「どうやら、もう、先ほどの化け物を召喚することはできないようだな」
そんな声が響いた。
どうにか目線を送ると、
例の鬼が立っていた。
「とてつもない化け物だった。私が何体いても、おそらく、あれには勝てないだろう」
しみじみと、そう言ってから、
「あれほどの化け物を召喚できるのであれば、私を召喚することも難しくはないだろう。貴様の召喚術に関する力量には感嘆する。そこは認める。しかし、私は私より強いものしか認めない。と言うわけで……さあ、殺しあおう」
などと、舐め散らかしたことを抜かす鬼。
センは、詰んでいる状態を前に、ため息を一つ吐いて、
「く、くそ……しゃーねぇ……」
奥歯を噛み締めながら、
例の鍵を握りしめて、
「俺は……まだ……がんばれ……る……」
一旦リセットすべく、
過去へと記憶を飛ばした。
★
目が覚めた時、
センは、
「ん……」
見知らぬ天井を見つめていた。
真っ白な空間。
体を起こしたセンは、
「……俺、もう、あのゴリラを呼べねぇのかな? 二度と呼べませんとかだったら、きついなぁ。俺の人生における、たった一度きりの切り札だった、とか言うオチじゃねぇだろうなぁ。……んー……いや、待てよ。仮に『人生で一回しか呼べないとっておき』だったとしても、リセットされてんだから、このループ内では呼べるんじゃね?」
と、そう考えたセンは、さっそく実験すべく、外に出て、ナイフを獲得すると、サクっと自分の足をカットして、吹き出た血で、地面にジオメトリを描き、そこに、足をセットした。
そして、強く念じながら、気合いを入れて、
「無敵ゴリラ、召喚!!!」
その呼び声に応じるかのように、
ジオメトリが、荘厳な光に包まれる。
そして、登場した、噂の無敵ゴリラ。
「がははははは! 信じられんな! まさか、このワシが召喚されるとはなぁ! がはははははは!」
魔法陣から現れたのは、筋肉の化身。
再び呼び出すことに成功。
「よ、よし……」
拳を握りしめて、歓喜を口にするセン。
大量の出血で、あまり盛大に喜びを表現できないが、ゴリラを再召還できて、内心、めちゃくちゃ喜んでいる。
「ワシがその気になれば、この程度の召喚強制力など、一瞬で弾き飛ばせるが……まあいい。ワシを呼んだ理由を言え、仮面の小僧。コトと次第によっては、救いの手を差し伸べてやらんでもないぞ! なんせ、ワシは、全世界で最も尊き英雄の下僕だからなぁ! がははははははは!」
「お、俺は異世界漂流者だ。困っている。助けてくれ。とりあえず、この足を……どうにかしてくれないか……このままじゃ、死ぬ……」




