99話 俺には一生無理なカリスマ……尊敬に値するぜ。
99話 俺には一生無理なカリスマ……尊敬に値するぜ。
「がははははは! 信じられんな! まさか、このワシが召喚されるとはなぁ! がははははははははははははは!」
魔法陣から現れたのは、筋肉の化身。
とてつもないオーラを放っている化け物。
男性ホルモンの擬人化とも言うべき、
そのムキムキゴリラは、
「ワシがその気になれば、この程度の召喚強制力など、一瞬で弾き飛ばせるが……まあいい。ワシを呼んだ理由を言え、仮面の小僧。コトと次第によっては、救いの手を差し伸べてやらんでもないぞ! なんせ、ワシは、全世界で最も尊き英雄の下僕だからなぁ! がははははははは!」
「……あんたが誰かはどうでもいい! とにかく助けてくれ! 事故に合って、意識をうしなって、気づいたら、ここにいて、今、モンスターに襲われている! だから、どうか!」
「ふむ、ここは……第十アルファで……貴様は第一アルファ人か……がはははは! 貴様の話が全て事実なら、『事故で異世界転移が発動した』といったところかな?! まあ、なくもないだろう! 神隠しの原因など無数にあるからなぁ!」
そう言いながら、ムキムキゴリラは、バキバキっと指の関節を鳴らし、
「となると……救出せねばならんな! 神の慈悲!!」
超高位の回復魔法で、センのズタボロな肉体を癒すと、その流れのまま、
「このワシを召喚できるという特異性も気になるところだが、まずは、『漂流者(仮面の小僧)の救援』というミッションを最優先とする! 脆弱なモンスターども! 覚悟するがいい! ワシの拳は重たいぞ! がははははは!」
脳天にまで響き渡るほどの、力強すぎる笑い声。
その笑い声の頼もしさはハンパなかった。
……精神的支柱。
そんな概念が、センの脳裏をよぎった。
『たとえどれだけ劣悪な状況』でも、『このムキムキゴリラがいれば、どうとでもなるだろう』と言う、強烈な安心感に包まれる。
(すごいな、このゴリラ……よくもまあ、これだけの頼もしさを醸し出せるもんだ。俺には一生無理なカリスマ……尊敬に値するぜ)
などと、センが思っている間に、
パァアアアン!!
と、音が響いた。
そう思った時には、デデが粉微塵に爆散していて、そして、
ドォオオン!!
と、音が響いたと思った時には、
すでに、バフメットがデデ以上の木っ端微塵になっていた。
(え、なにした? 時間でも止めた?)
センの目には何も見えなかった。
気づいたら、ゴリラが別の場所にいて、気づいたら、化け物が破裂していたのだ。
わけがわからないよ。
センは数秒呆けたが、
どうにか意識を取り戻し、
「……す、すごいな、あんた……さっきの悪魔とか、俺からすれば、相当強い部類なんだけど……何が起きたかわからんレベルで瞬殺とか……」
「デデやバフメットなど、ワシからすれば、ただのハエと変わらん」
「えっぐぅ」
と、そこで、ゴリラが、
「……ん……?」
気づいた。
『センの顔面を覆っている仮面』がカタカタと動いていること。
センに恐怖をあたえていたデデの仮面は、どうやら、無敵ゴリラという絶体絶命の絶望を前にして熱く燃え上がったようで、
ヒュンッ、
と、凄まじい速度で、
ゴリラの顔面にはりついた。
……ゴリラは、それを、避けようと思えば余裕で避けられたが、
「面白い! 一介の中級モンスターとは思えない、その根性。『世界一の神を信仰する武人』として、全身全霊で受け止めてやろう! がははははははは!!」
仮面オン仮面。




