96話 とっても残酷な悪魔。
96話 とっても残酷な悪魔。
(なんかねぇかぁ! なんかぁ! ――『歩くだけでレベルが上がるハッピーなクツ』とか、『テンションが上がるミステリアスなタンバリン』とか、『攻撃力が倍になる戦闘狂な太鼓』とか! そういうチートが、どっかに転がってねぇか! ラストダンジョンだったら、そう言うバグレベルのチートもあるもんだろう! 幸運の女神よ! 俺を愛してくれ! なんだったら、結婚してくれぇえ!! 俺の童貞を君に捧ぐぅうううううううううううううううう!!)
心の中で、そんなことを叫びながら、
センは、何かないか、何かないかと、
死ぬ気の全力で探索をし続ける……
その途中で、
「ギヒヒ、なんか侵入者がいるなぁ」
ヤギ頭で奇妙な体をした『完全にヤバそうな悪魔』とエンカウントするセン。
最上級悪魔種の『ラメントバフメット』。
アストラルマジシャンよりもワンランク下のモンスターだが、『最々下級のゴミ虫センさん』の視点では、誰を相手にしても『秒で殺される』という結論に変化がないので、最上級も王級も大神級も大差ない。
バフメットは、アストラルマジシャンよりも弱いモンスターだが、悪魔種であるため、アストラルマジシャンよりも遥かに残虐。
『命を弄びたい』と言う本能がプログラムされている。
ゆえに、センを簡単に殺そうとはしない。
できるだけ、いたぶってから殺そうと、
「ぎひひ! 呪縛ランク5!」
センの動きを止める魔法を使った。
そして、
「ぎひゃひゃ!」
腕や足など、命の停止に即直結するわけではない個所に丁寧な傷をつけていく。
まるで、サイコな子供が、虫の足を一本ずつ抜いていくかのように。
「ぎひっ、ひひひ!」
楽しそうに、黒く笑いながら、
センの肉体を刻んでいく。
そして、ついには、
「ぐあぁあっ!!」
センのふとももに、『悪魔の鎌』を入れた。
サクっと切断される、センの太もも。
支えを失って倒れるセン。
「うぐぅうう!!」
大量の血が流れる。
普通に失血死しそう……だが、
「闇色領域ランク6」
真っ黒な笑顔で、ふざけた拷問魔法を使う。
これで、もう、バフメットの許可がなければ、センは死ぬこともできない。
激痛の中、センは、自分の体が動くことに気づいた。
どうやら、足を切って逃げられなくなったので、呪縛をといたらしい。
「うぐぅう!!」
センは、すぐさま、自分の腹にナイフを入れて、鍵を取り出す。
その様子を、バフメットは、
「ぎひひ! 自殺しようとしても無駄無駄。闇色領域が展開されている間は、死ぬことすらできない」
『勘違いしてもらったこと』を、センは『ありがたい』と思いつつ、サクッとタイムリープしようとしたのだが、
そこで、
「さあ、楽しいショーをはじめようか」
そう言いながら、バフメットが、自分の指を噛んで血を流し始めた。
(何する気だ……?)
センは、『今後もバフメットと対峙する可能性』を鑑み、『バフメットが何をしようとしているのか』だけは確認してからタイムリープしようと考えた。
センの視線の先で、バフメットは、
「ふんふんふーん」
と、キモい鼻歌を歌いつつ、
自分の血で、
床に、ジオメトリを描く。




