94話 弱小運動部の補欠ぐらいにはなったぞ!
94話 弱小運動部の補欠ぐらいにはなったぞ!
身体ステータスを引き継げるのであれば、徹底的に鍛えることで、未来を掴み取ることも、あるいは、可能かもしれない。
「こうなってくると、最優先で考えるべきなのは『食べもん』だな……タンパク質さえあれば、体を作れる。虫のモンスターとかいるとありがたいんだがなぁ……仮に毒があっても、おそらく、ループの際に除去されるから、そこら辺は気にする必要ねぇ」
ここまで、何度もタイムリープをしてわかったこと。
肉体のダメージに関しては、完全に戻ると言うこと。
どういうシステムになっているのか、今のセンにはわからないが、ダメージは『無くなっている』のではなく、『回復している』ということだけは、感覚的に理解できた。
そう確信できている理由は、よぉくみると、腹に傷があるから。
『めちゃくちゃ接近して、よぉくみてみれば、確かに傷跡と言えるかもしれない白い跡』があるだけだが、センは検証のため、刺す場所を毎回変えて、変化があるか確認してみた。
センの腹部には、『細かく刻んだ薄い白髪』みたいな傷跡が何箇所かある。
そのため、センは、
「おそらく、『記憶』だけじゃなく、『回復させた肉体のデータ』も同時に過去へ送っている。そして、『俺の体を回復させている』……その……『魔法』なのか『鍵のアイテム効果』か知らんけど、その回復効果には、『最低限の栄養摂取(点滴的な)』的な効果もある」
と結論づけた。
「大量のタンパク質をとって、トレーニングを続ければ、最低限は『動く肉体』を獲得できる。自重トレーニングだけだと限界があるってのが懸念点だが……まあ、それは、最低限の下地を作ってから考えよう」
方針を決めると、
センは外に出て、
まずは、宝箱からナイフを取り出す。
そして、鬼が出てくる前に、一目散でダッシュ。
鬼に殺されかけるまで、もしくは、
他のモンスターに殺されかけるまでの間に、センは、『武器になるもの』か『タンパク質として摂取できそうな何か』を探す。
これまでの二ヶ月近くのトレーニングで、ある程度は『走り回れる体』になった。
20メートルシャトルラン的な換算で言えば、
『70回そこそこで限界』だったのが、『100回以上はどうにか行けなくない』というレベルまで成長した。
『ゴリゴリの文化部』が『弱小運動部の補欠』ぐらいにはなれた印象。
「いたぜぇ、でっかい虫ぃいい!! タンパク質のかたまりぃいいい!!」
鬼に襲われる前に、センは、どうにか虫種のモンスターを発見した。
薄羽の生えたサソリみたいな化け物。
サイズはドッジボールぐらい。
かなりキモい形状で、通常時なら、アレを食べようなどとは絶対に思わないが、しかし、この状況で贅沢は言っていられない。
センは、ナイフを左手に持ち替えて、右の拳を力強く握りしめて、
「くらえ、エターナルフォースブリザードパァアアンチ!! 相手は死ぬぅうう!!」
ただただ全力で右の拳を振り回すだけのセン。
腰も入っていない、気合いも足りない、半端なギャグを叫んでいるだけだから覚悟も足りない。
そんな拳など、
「痛ったぁああああ!! ぴぎぃいいいいいいいい!」
当然、通じるわけもない。




