88話 週休二日制のワナ。
88話 週休二日制のワナ。
「明らかに、チュートリアル領域で出てきたらダメな敵キャラじゃねぇか。マサ◯タウンの草むらで、ミュ◯ツーに出てこられても、目の前がまっくらになるだけなんだよ……」
と、世界に対してぶつぶつと文句を口にしていると、
そこで、鬼が、センを睨みながら、
「私を呼んだのは貴様か?」
と、そう声をかけてきた。
そのセリフを受けて、センの頭が高速で回る。
(この鬼、日本語喋ってんなぁ……ご都合主義か、それとも『ほんやくコンニャク』的な何かしらが自動で発動しているのか……まあ、その辺は後回しだ。それより、こいつは、もしかして、誰かに召喚された? そして、誰に召喚されたか知らない? だったら……)
命のピンチを前にして加速する防衛本能。
センは、できる限り『強く見える表情』を作り、
「ああ、そうだ。強き鬼よ。俺の命令に従え。心配しなくとも、無茶を言う気はない。ちょいと力になってもらいたいだけさ。ボーナスと退職金は保証できないが、週休二日制は約束してやろう」
「……」
「わかった、わかった。そんな怖い顔をするな。折れてやるよ。週休二日制のワナに気づくとは、なかなか見所のある鬼だ。……要望通り、完全週休二日制にしてやる。さあ、これなら文句はないだろ? 言っておくが、これ以上を望むのは、社会人として失格だよ、君ぃ。これで文句を言っていたら、他のところでは働けないよ?」
「……私は強き者にしか従わない。私を支配したければ、武を示せ」
強い語気で、そう言いながら、
魔法の剣を召喚して、
「私は禍羅魅神鬼。モンスターの最高位、大神級の鬼種」
堂々と名乗りをあげると、
「行くぞ!」
ダッと、
凄まじい速度で距離を詰めてきた。
センはわずかも反応できない。
気づいた時には、
「――はれ?」
真一文字にきりすてられていた。
足を失った上半身センは、地面にボトリと落ちて、
「がはっ」
大量の血を吐いて朦朧。
視界がぐわんぐわんと揺らめいて、
続いて、脳が激痛を理解し始める。
痛覚を追い越していく意識の消失。
死を前にしたセンは、
(……え、まじ……)
と、疑問符の海に溺れることしかできなかった。
加速する死の鳴動。
ゆらゆらと、命のカウントダウン。
心の芯が閉じていく。
感情が溶けて、
自由になるの……かな……
「ぐっ……いやだ……まだ……死にたく……」
意識が切れる寸前、
『強い未練』が、センの魂を、ギリギリのところで引きとどめてくれた。
視界がぼやけて、もう、ほぼ何も見えないが、
(なにか……ないか……一発逆転の……なにか……)
最後の最後まで命を諦めない獣。
……『諦めなかったら何でもうまくいくか』と言えば、決してそうではない。
諦めなくても失敗することもあるし、逆に、諦めたのにうまくいくこともある。
命の結果なんて、たいがいは、理不尽で不明瞭なもの。
……ただ、今回ばかりは、
明確に、
『諦めなかった』から、
『掴み取ること』ができた。
(これ……は……)
もうすでに視界はぐにゃぐにゃ。
何が何だかわからない。
けど、感触だけは、少しだけわかった。
(かぎ……?)
自作コミカライズ版のページ数が確定しました。
今回の1話(13話)は、68ページで仕上げることになりました。
あと2週間ほどかけて仕上げて、
2話(14話)にとりかかる……
というスケジュールで動いております。
一応、2話のネームは完成しており、
60ページ予定ですが、
最終調整やオマケページの追加等で、
70にまで増える可能性はあります。
2話(14話)の見所は、
「ユンドラ&サイケル」と「セン&アダム」の絡みですね。
そして、まだネームはできていませんが、
確実に、3話で、
サイケルVSセンが実現する……
はずです(*´▽`*)




