85話 どういう原理だ?
月末で遅くなる可能性が高いので、
朝に2話投稿します。
本日の1話目です。
85話 どういう原理だ?
センは、最後の最後まで抵抗しようとしたのだが、
仮面男の、
「永久閃光・EZZパニッシャー」
『えげつないカスタムが施された封印系の魔法』を喰らったことで、センのコアオーラは、ついに、ガチっと封印される。
そのまま、体が、べちゃっと『踏み潰されたトマト』みたいに、ざんなく潰れて、出来の悪いスライムみたいになった。
「さて、それじゃあ……」
と、ようやく自身の仕事に取り掛かろうとする仮面男の目に、ありえない光景が飛び込んできた。
コアオーラを封じられ、出来の悪いスライムになったセンの肉体が、どういう理屈かさっぱり不明なのだが、グニグニと動き出し、そして、
――……せん……けん……――
まるで『ア◯タカの腕に襲いかかったタ◯リ神の触手』みたいに、ぐにゃぐにゃビチャビチャのよくわからない何かが、バグったヘビを想起させるムーブで、仮面男に襲いかかる。
「すごいな……どういう原理だ」
と、心底ウザそうに、仮面男は、
襲いかかってくるビチャビチャの触手を避けて、
「神速閃拳」
殴りつけると、パァンと水みたいに弾けて、けれど、空中ですぐに、結集し、また、しつこく襲いかかってくる。
「ストーカーに怯えるアイドルの気持ちが、よくわかったよ。重度の粘着は、最高位の恐怖だ」
仮面男は、その後も、センの動きや可能性を封じるための手を無数に打ったが、ことごとく、その全ての抜け穴をついて、『抵抗』を継続してくる。
そのイカれた鬱陶しさを味わい尽くしたことで、
ついに仮面男は折れて、
「わかった、わかった。できれば自力で黙らせたかったけど、もういいよ。お前の家族に手を出さないと、誇りにかけて約束してやる。俺は蝉原とは違う。魂の誓いは絶対に破らない」
本気の約束を交わしたところで、
ようやく、センのストーカーは終わった。
相手の言葉の『重み』が理解できないほど、センの頭はボケちゃいない。
相手の言葉の深みに対する謎の信頼感から、センの心は、抵抗をやめた。
センが停止したことで、やっと、自由に動けるようになった仮面男は、
「だ、ダルすぎる……200兆年物のセンエース、ダルすぎる……比べてみると、200『億』年物のセンエースは、だいぶ『しょっぱい坊や』だったな」
と、心底からの文句を口にしてから、
先ほどの戦いで奪い取った『センエースの全部』を、自分の前で『一つ』に固めると、
「力と記憶を一時的に封印させてもらう。その手の縛りはもう慣れっこだろ? むしろ、力と記憶を奪われた状態でいる方が、『実家のような安心感』に包まれるんじゃないか?」
などと、ファントムトークに花を咲かせつつ、
「……『トラックに跳ねられる前の記憶』は残しておくつもりだが、断片的には奪わせてもらう。その方が色々と楽なんでね」
仮面を外して、センの顔面に装着する。
仮面を外した『元仮面男』の顔は、
目の下にでかい爪痕があって、腫れぼったい目に、への字口という、どうしようもない仕上がりだった。
顔面偏差値は48が精々。




