81話 決断するまではごちゃごちゃ考えるが、こうと決めたら一直線。
81話 決断するまではごちゃごちゃ考えるが、こうと決めたら一直線。
「臨機応変に『適切な解答』を出せと言っているのではなく、それぞれの状況で、『最低限の処理』しかできなくとも、どうにかゴールに辿り着けるフローチャートを作成すべき、というのが僕の結論です。道中での厄介ごとに対して、こうしろ、ああしろと、膨大なマニュアルを設定したところで、無能が、それを完璧に理解して実行できるとでも? あり得ないんですよ。『最低限の成果』か『失態』を前提にすべき。僕の認識だと、今回のマニュアルで必要なのは、『有能な秀才に正解を示すもの』ではなく、『無能に対して、ミスをどうカバーするのかを示すもの』です」
アモンのその意見には納得できる点があったのか、UV1は、スンと黙って思案に耽る。
(ミスのカバープランに限定すれば、想定すべきパターンを最小限に抑えることが可能。消極的でペシミスティックな視点であることは間違いないが、『無能の不完全性を強く念頭に置いておく』ことは、『全体を俯瞰で統制しなければいけない状況』において、確かに必須)
ある程度、頭の中で、アモンの意見と自分の意見の折衷案を整えてから、
「……全てを『出たとこ勝負』で挑むのは、流石に認められない。それでは、我々が存在する意味がない。ゴールと地図だけなら、我々でなくとも作成可能。最善となる地図の作り方と、間違いなくゴールへと導けるシステム作りは必須」
「それはもちろんそうだと思いますよ。そして、その部分に関しては、行き当たりばったりではなく、丁寧に『多角的な視点』で、連携・研鑽していきましょう。百済と楽連、方向性が180度異なる二人が組まされている理由は、そこにあると僕は考えます」
「それで? アモン、貴様は、ここからの『次の一手』をどうするべきだと考える?」
「周辺調査の結果、東の方に、『とても難易度が高いダンジョン』があるという情報を掴んでいます。あまりに危険すぎるため、現地人は基本的に近づかないという異質な遺跡。……この森に対して拠点化等のアクションを取らないのであれば、そちらの迷宮を攻めて見るのも一つの手だと思いますよ。この世界での最高位ダンジョンを理解しておくことは、世界の程度を把握する上で、とても有益で、何よりコスパが非常に良い。最高位ダンジョンにて『世界の程度』をあらかた把握してから、『序列真ん中ぐらいの国』を落とす。このルートが手堅い一手かと。まずは、それらを実際に成した上で、マニュアルに落とし込んでいく……のがよいかと」
「ふむ」
頭の中で、他にも『いくつかのプラン』を検討した上で、UV1は、
「……その案を採用する。周辺の村や町で、その遺跡に関する『最低限の情報』を収集してから、すぐに向かおう」
決断するまではごちゃごちゃ考えるが、こうと決めたら一直線。
やらない理由を探している怠け者ではないので、プランが固まれば電光石火。
★
二人が、東の魔境『リスルー・ソクーダの遺跡』に向かうと知ったと同時、
舞い散る閃光センエースは、
瞬間移動で、リスルーに向かい、
何かしら、『厄介なバグ等が発生していないか』と、豪速で隅々まで調査していく。
『配下からの過保護が鬱陶しい』と、いつもやかましいセンだが、
『過保護力』で、センさんに勝てる者はそういない。
自分に対する厳しさと、他人に対する甘さが、常にどちらも過剰というダメ人間っぷり。
「俺の人生的に、ここらで、ヤベェのが湧いて、あいつらを八つ裂きにするという可能性も十分にあり得るなぁ、と思っていたが……大丈夫そうかな……」




