78話 UV1ごときに負けたザコが夢を見るのはおこがましい。
78話 UV1ごときに負けたザコが夢を見るのはおこがましい。
目が覚めた時、
すでに、世界は夜になっていた。
闇夜の森の中、
焚き火のパチパチという音だけが響いていた。
音のする方に視線を向けてみると、
UV1が火に薪をくべていた。
「起きたか」
と、ノールックで言われたアモンは、
一度、ぐっと目を閉じて、奥歯を噛んでから、あえて、ガキっぽい表情で、
「……やはり、まだ勝てませんでしたね。まあ、今のところ、あなたの方が、格上なので、当然と言えば当然ですが。僕はまだまだ歳若く、発展途上。そのことをお忘れなく」
成長率や、伸び代という点で見ると、アモンは、UV1を超えている。
『200兆年にも及ぶ、尊き神の導き』を受けたことで、大量の経験値を稼いだゼノリカの面々。
すでに『完成した肉体』を持つものは、与えられた経験値による恩恵を『100%』受け取っているが、アモンのように、まだまだ発展途上の子供の場合、『経験値を注がれるベース』が未完成であることから、100%の恩恵が受けられていない。
要するには伸び代があるということ。
今後、アモンは年齢を重ねて成長するだけで、基礎存在値がメキメキと上がっていく。
「僕はいずれあなたを超える。あなただけではなく、カンツ猊下や、ジャミ猊下をも超えて見せる。そしていつか、全てを超越し、主の隣に立ち、主の代わりに聖務をこなすんだ。主の手を煩わせることが、配下として一番の恥だと僕は考える。主は君臨してくださるだけでいい。配下が、主を、盾や剣として利用するなど、もってのほか」
覚悟を宣言するアモン。
事実として、将来的に、アモンは、UV1を超えてしまうだろう。
アモンの才能は、『劣化ジャミ』の評価を受けるほどに膨大。
劣化という言葉が悪すぎるので、微妙に聞こえるが、
『ジャミには劣る』という評価は、言い換えれば、
『ゼノリカの中でも最高クラスの才能を誇る超人を引き合いに出せるほどの才能』ということ。
これほどの評価を受けるものはゼノリカの上層部においても稀中の稀。
――その事実は、UV1も理解している。
だからというわけではないのだけれど、
「まだ若く、発展途上……そんな前提があるとは言え、私ごときに負けている貴様が、本当に、主の領域にいけると本気で思うか?」
「僕が最終的にどこまで伸びるか、それを完璧に予測することは不可能なので、実際のところ、届くかどうかはわかりません。しかし、『本気で届こうと努力する気概』……それがなければ絶対に届かない。これだけは100%事実です」
「……」
「あと、もう一つだけ、あなたに対して、絶対に言っておきたいことがあります。僕は決して『UV1ごとき負けた雑魚』じゃない」
そこで、UV1は、
『こいつ、やはりガキだな』とでも言いたげな顔をしてから、軽く鼻で笑いつつ、
「みっともない戯言を……貴様は、間違いなく負けた。貴様の『本気で立ち向かわなければ届かない』という持論も確かに100%の事実だが、貴様が私に負けたというのも100%の事実だ。嬉しげに事実を語りたがるよりも先に、まずは、すべての事実を受け入れるところから――」
「改めていう。僕は『UV1ごとき負けた雑魚』じゃない。僕は『UV1という強者にギリギリ負けた強者』だ。僕に勝ったほどの超人を貶めることは、誰であろうと許さない」




