76話 生まれながらの家猫がヘソ天する勢い。
76話 生まれながらの家猫がヘソ天する勢い。
「じ、慈悲を……」
と、許しを乞うてくる龍に、
センさんは、
「慈悲ならくれてやっているだろう? お前は俺の家族を食おうとしたんだ。もし、それが悪意によるものだったなら、お前は俺に知覚されたと同時に死んでいた。お前の行動の起因は、悪意や食欲ではなく、この森周辺の均衡を保とうとしたが故の、責任感からくるソレだったから、流石に殺すのもアレかなぁ、と思い、こうして生かしてやっている。これが慈悲以外のなんだってんだ。……己の現状が理解できたかな? ワンダーボーイ」
センの言葉を受けて、
龍は震えながら、
平伏のポーズをより深くして、
「も、申し訳ありません。まさか、あなた様ほどの強者の家族だとは思ってもおらず――」
「オーライ、オーライ、オーライだぜ、ボーイ。そう畏まらなくても、取って食いやしねぇよ。楽にしてくれ。ここはお前の森だろう? 生まれながらの家猫がヘソ天する勢いで、豪快に、くつろいでくれや」
「……」
恐怖で震えて、何も喋れなくなる龍。
ついには、ストレスに耐えきれなくなり2度目の失神。
秒で回復されて、逃げ道なし。
メンタルズタボロの龍に、
センは、
「ところで、ボーイ。お前、『ポガッサの加護』がかかっているな。あいつに召喚され、かつ、知性を爆上げされている。……その認識で間違いないな?」
「わ、我が主を……ご存知で……?」
「俺はポガッサの父親だ、ボーイ」
「な、なんと……」
「天帝ポガッサは、『壊れたモンスターの駆除で忙しい』から、『地上の管理は、お前みたいな召喚獣に任せている』……という認識で問題ないかな、ボーイ」
「は、はい……神の父よ」
「おいおいおい、ボーイ、ボーイ、ボーイ。硬い硬い硬い。神の父とか、そんなしんどい呼び方は、ナンセンスで、バッドで、気品がなく、ちゃちで、矮小で、何より、速さが足りないぜ。俺のことは、気軽に『家族が増えるよ、やったねセンちゃん』とでも呼んでくれ」
「……?」
「ああ、そんな不思議そうな顔をする必要はない。俺の発言は、一から十までデフォルトでバグっている。まともに相手をしていたら心をやられるから、気をつけろ」
と、好き放題なことをほざき散らかしてから、
「さて、と。それじゃあ、ボーイ。お前に命令だ。『初対面の顔面偏差値48』にいきなり命令されるとか『冗談じゃない』と思うかもしれないが、死にたくなければ、黙っていうことを聞いた方が身のためだぜ」
と、前を置いてから、
「……『この二人(アモンとUV1)』のことはいったん放置しておけ。で、もし、こいつらが接触してきたら、黙って要求に従っておけ。バカな態度さえ取らなければ、こいつらがお前に危害を加えることはない。そして、この世界が害意に晒されることもない。理解したか、ボーイ」
センの言葉を受けて、
龍は、何度も、首を縦に振った。
「いい子だ、ボーイ」
センはそう言い残し、
瞬間移動で、その場を後にした。




