74話 センエースの感情論ベース持論。
74話 センエースの感情論ベース持論。
「転移早々殴り合いかよ……百済と楽連って、ほんと仲悪いなぁ……」
などと、呑気なことをほざきつつ、
小指で耳の穴を掃除している閃光。
「ケンカの原因が何か知らんけど、なかよくやればいいのに。その方がいろいろ楽なのに」
今回の喧嘩の原因の根底にあるのは、主への熱すぎる想い。
『センエースに対する愛』の方向性の違いが、この喧嘩を引き起こした。
どちらも気が荒いのは事実だが、センエースに対する想いがなければ、ここまで猛ることはなかった。
UV1の『センエースに対する想い』が『常識の範囲内』に収まっていれば、アモンの提案に対し『遊びじゃないんだぞ』などという侮蔑は出てこなかった。
となれば、アモンがキレる理由もなくなる。
つまり、センエースが悪い。
しかし、センエースはそれに気づかない。
「ま、お互い、殺す気はないみたいだし、好きなだけやればいいさ。そうじゃないと伝わらない想いとかもあるだろうしな……知らんけど」
センは、
『喧嘩はダメ! みんな仲良く!』
などという、『小学生以下を対象とした幼年漫画御用達のおためごかし』をほざく気は一切ない。
競争という名の喧嘩は必須だし、
別に、『みんながみんな、絶対に仲良くしないといけない』なんてことも思っていない。
『どんだけ頑張っても給料一緒!』
『かけっこは、全員で、おてて繋いで仲良くゴール』
……アホかと。
『努力』という概念を否定する愚策中の愚策。
平等という概念をはきちがえた失策。
独裁と貧困しか生まない、この世で最も愚かな御託。
……ゆえに『仲良くできるならしたほうがいいが、できそうにないなら無理をする必要はない』というのがセンさんの基本スタンス。
『合わない相手』がいるのは普通。
そういう『当たり前の感情論』をシカトして、『みんな仲良くすべき』なんて言葉で、コミュニティ内での『統制しやすい規範的関係性』を強制するのは際立ったギルティ。
そういう、狂った同調圧力に対する反発精神みたいなものが、センの中では強く煮えたぎっている。
狂った同調圧力の果てにあるのは『わが校にいじめはありません』という戯言。
いじめのない学校なんかあるか、ボケ。
人間が二人以上集まったら、その時点で、大小差はあれ、確実に軋轢は生じるのだ。
それが、数百人という単位になって、軋轢の一つもないとか、ありえるわけがない。
……そんな、『しんどい感情型持論』が『いかつい』こともあって、センは、『センエースを信仰しよう』という同調圧力にずっと反対しているという側面がある。
単純な話、自分がソレをされたら嫌なのだ。
『この神様を死ぬ気で愛しなさい』と誰かに強制されるとか、センからすれば、『あ?』とガンギレしてしまうクソ案件。
『戦争をやめろ』はいい。
『道路交通法を守れ』とかもいい。
なぜなら、その辺のルールがないと『危険』だから。
そういうルールの制定は同調圧力ではない。
必要な『社会整備』でしかない。
センは、何でもかんでも文句を言っているわけではない。
線引きは常に大事にしている。
その視点で言えば、
『異世界中にセンエースを信仰させる』という愚行は、信念的な意味で、絶対にNG。
対して『ゼノリカを愛せ』はオールオッケー。
それは、センの中だと『赤信号は止まれ』という社会整備と一緒だから。




