72話 人は、何度でも同じ過ちを繰り返す。
72話 人は、何度でも同じ過ちを繰り返す。
「……ふぅぅぅ……」
最初に、UV1が、奥歯を噛み締めて、自分の感情を律した。
ゴート・ラムド・セノワールとの関係性が、ここで活きた。
『頑固なガキ』相手に『意地を張り合うこと』の無意味さは理解できている。
「もういい。無駄な言い争いで時間を潰すわけにはいかない。ミッションを進めよう」
今回の布教ミッションにおける指揮権は、階級的に上位のUV1にある。
とは言え、上司に絶対服従というわけではない。
発言権や拒否権は普通にある。
基本的な命令系統の順位でUV1が上にあるだけ。
今回は、二人のテストも兼ねているので、このような形式になった。
危ない作戦の場合、当然、もっとガチガチの命令系統が敷かれる。
「マニュアルに則った『転移地点の調査』は終了。ここから先は、特に、『上から決められたフローチャート』が存在するわけじゃない。この上なく尊き主の威光を広めるために、どう動くのがベストか、提案があるなら聞こう」
アモンは何か言いたげな顔をしていたが、ここで、先ほどの口喧嘩の続きなど始めたら、本格的な無能を晒すことになるので、
アモンも、UV1と同じく、
「すぅううう……はぁ……ぁぁ……」
深い深呼吸を挟んでから、一度、奥歯をギュッと噛み締め、
「……『国を堕とす』のが一番手っ取り早いと思いますよ。最低限の文化や情勢を調査してから、傀儡にすべき国を決めて上層部を制圧。……その後は、『国家の暗部』として動きつつ、あらゆる手段を用いて、周辺国家を取り込んでいき、なるべく早く天下統一。『世界政府(ゼノリカ支部)』を設置し求心力を増幅。『ある程度の下地』を作ってからは、この世界に生きる連中自身の『意志と行動力』を『軸』に聖典教を広めさせる。主の功績が凄まじすぎるので、その尊さを信じられない『常識バカ』が無数に沸くでしょうけど、その手の愚者には、いったん、とんでもない災厄を叩き込み、そのあとで、高次の祝福を与える。主の尊さが理解できるまで、ムチと飴を繰り返す。主を信じないバカがゼロになるまで、永遠に繰り返す」
「私も、それが一番手っ取り早いと思う。問題は、それぞれの細かい手段。どのように情報を集め、どのように天下を治め、どのように聖典教を広めるか」
「最初からギチギチに計画をくまなくとも、ある程度、行き当たりばったりでも、問題はないと思いますよ」
「そんなテキトーなやり方では、マニュアルが作れない。我々はこの世界に遊びに来たわけじゃない。論理的で具体性のある道標……つまりは『光』となること。それが私たちの責任」
「ちっ」
「……アモン。貴様、まさか、いま、舌打ちしたか?」
「UV1、あんた、いちいち、言い方が腹立つんだよ。自分が上位者だって意識が強すぎる。まさか、僕を躾けようとでも思っているのか? 冗談じゃない。僕は、あんたより若いが、ゼノリカの天上に誰よりも近い超人だ。努力の密度で言えば、あんたより上なんだ。あんたから教わることなんて別にない。上位者目線で嗜めてくるな。さっきからずっとそうだが、僕は一度として、何も、間違ったことは言っていない。あんたの意見とは異なるかもしれないが、それだけだ。何が『遊びにきたわけじゃない』だ! 侮辱するのもいい加減にしろ!」




