71話 法の穴をつく……それは、神法に対する最大級の侮蔑。
71話 法の穴をつく……それは、神法に対する最大級の侮蔑。
ゼノリカでは、『他人の足を引っ張る』ということが『正式に禁止』されているため、露骨な嫌がらせや、いじめのような行為は行われていない……が、だからと言って、穏やかな関係性になるかというと、決してそんなことはなく、むしろ、『フラストレーションの発散場所がないため、全方位に対してイラついてしまう』という『歪んだ現象』も普通に起こり得るのだ。
100人の組織で、仮に10人がいじめられていた場合、他の90人は比較的仲良くできたりする。
いわゆる、生贄である。
『イジメられる要員』という生贄がいた方が、組織が円滑に回るということは往々にしてあり得る。
『倫理的に正しい否か』を一旦横に置いて、『潤滑油としての効果』だけに着目すれば、『特定の弱者がいじめを受けているという状況』は、『生産性を大事にしているコミュニティ』にとって、非常に大きなプラスである。
だから、『倫理的に未成熟な世界』において、イジメやパワハラがなくなることはあり得ない。
なくなれば、円滑な社会生活に支障が出てしまうからである。
そう言った前提を踏まえた上でゼノリカを見てみよう。
ゼノリカは、他者の足を引っ張ることを禁止している。
感情論重視のイジメ・パワハラなども禁止されている。
※『ルールに則った粛清』は、むしろ推奨されている。これだけ『ルールを破れば死刑』と口を酸っぱくして言っているのに、それでもルールを破るようなバカは知らん。自業自得。ちなみに、他者に対して『あえて、ルールを破るように誘導して足元をすくう』という『神法をナメくさった形のいやがらせ』をした者は、最もきつい罰をあたえられた上で確定斬首。『法の抜け穴をつく』『勝手な解釈で悪用する』という行為は、『神法を侮蔑する行為』であると判断され、何よりも重たく処罰される。
ゼノリカでは、イジメやパワハラでストレス発散ができない。
けれど、人間である以上、ストレスはたまる。
スーパーブラック体制のゼノリカ天上天下で仕事をしていると、人間関係系のストレスが溜まりまくる。
しかし、発散方法はない。
立場上、遊びにいってパーっと弾けるということもできない。
つねに、修行、修行、修行!
合間で、仕事、仕事、仕事!
膨大な義務と責任感で常にがんじがらめ。
この状態が続けばどうなるかというと、
UV1やアモンのように『ちょっとしたことでバチバチ睨み合う』という険悪な人間関係がデフォルトになる。
『高潔さを徹底すること』が、一般的な人間にとって、いかに難しいかという話。
誰もがセンエースの完璧な高潔さを、正確にトレースできるわけじゃない。
それが出来れば、世話はない……というか、神法など必要なくなる。
「……ふぅぅぅ……」
最初に、UV1が、奥歯を噛み締めて、自分の感情を律した。
ゴート・ラムド・セノワールとの関係性が、ここで活きた。
『頑固なガキ』相手に『意地を張り合うこと』の無意味さは理解できている。
「もういい。無駄な言い争いで時間を潰すわけにはいかない。ミッションを進めよう」




