70話 プライドを処理できない人類はゴミだと教えたはずだがな。
70話 プライドを処理できない人類はゴミだと教えたはずだがな。
「間違っているなどという気はないですよ。僕の視点では『こっちの方がいい気がする』という客観的な『別視点の意見』を述べているだけです。あなたに反論はしていないし、否定もしていないし、ましてや攻撃しているわけでもないんですから、無闇やたらにつっかからないでもらえます? 鬱陶しいので」
「鬱陶しい? それは上司に対する適切な発言か? 栄えあるゼノリカの天下、楽連の武士、督脈の15番、アモンよ」
「次は言葉尻を捉えて粘着ですか? これって、神法で禁止されているパワハラじゃないんですかね?」
「パワハラと叫べば、過ちをうやむやにできるとでも? そういう歪んだ醜さこそ、ゼノリカでは禁止されている愚行中の愚行」
そこで、アモンは、ガキらしいムっとした顔になって、
「僕はミスを犯していない。年齢が若いからと言って、過剰に侮るのはやめろ。わかっていないなら教えてやる。あんたもそうだろうが、僕だって、尊き主の配下なんだ。主の剣として、完璧であろうと努力を続ける僕を、年齢という偏見だけで侮蔑することは許されない! 僕への侮蔑は、僕を愛してくださっている主への侮蔑だと判断する!」
「自分のミスの責任を神になすりつけるとは、正気か、貴様」
「僕はミスをしていないと言っているんだ! 人の言葉が理解できないのか!!」
往々にして、『強い主張』や『高いプライド』を持つものは、『対話上の柔軟性に欠ける』という大きなデメリットを背負っている。
アモンは、神を知る前からプライドの塊だったが、神を知ったことで、より、『尖ったプライド』に磨きがかかってしまった。
決して、虎(神)の威を借りているわけではないが、『自分は、最も尊き神の配下である』と言う『べらぼぉに強い自覚』が、彼の中にある『ファンタスティポな自意識』を『過剰に増長させている』と言うのもまた事実。
センエースを正しく知ったからと言って、人間として『完璧に正しい命の結論』を出せるかと言えば、それは断じて否。
そこは、まったくもって別の話。
激しいオーラをぶつけ合うUV1とアモン。
両者の間で、バチバチと、火花と電流が走る。
えぐりこむように、視線をぶつけ合う。
とても静かだけれど、放出されているエネルギー量はハンパじゃない、イカれたようなメンチの切り合い。
「「……」」
数秒の沈黙。
その間、どちらも何も言ってはいないが、両者の目には、明らかに『あん? やるならやったんぞ』という激しい色がともっていた。
ゼノリカ内部では競争が推奨されており、仲良しこよしなグループというのは基本的に少ない。
誰もが、より上のポジションを求めて必死に毎日を積み重ねている。
『他人の足を引っ張る』ということが『正式に禁止』されているため、露骨な嫌がらせや、いじめのような行為は行われていない……が、だからと言って、穏やかな関係性になるかというと、決してそんなことはなく、むしろ、『フラストレーションの発散場所がないため、全方位に対してイラついてしまう』という『歪んだ現象』も普通に起こり得るのだ。




