69話 センエース教科書の35680ページの右下に小さく書かれている注釈。
69話 センエース教科書の35680ページの右下に小さく書かれている注釈。
「原因は、この森のヌシでしょうね。レインボー・ネオドラグーンが一体、森の奥深くで巣を形成しております。存在値は、およそ、350」
「こんな中規模程度のショボそうな森を、超王級の龍種が支配しているというのか? 前代未聞だな」
「ちなみに、レインボーの巣には、何種類か、王級のモンスターが混じっていましたよ。確認できただけで8体以上」
「この森が何か特別なのか、それとも、この世界は、高位のモンスターが沸きやすいのか……」
ここで、『ゼノリカの面々や、第二〜第九アルファの面々が、頭に直接叩き込まれた記憶』に関する詳細を述べておく。
彼・彼女らの頭の中に注ぎ込まれた情報は、『センエースの活躍シーンや、センエースがとんでもない献身を披露している場面の、まとめ集』でしかなく、『センエースが経験した旅路の記憶』を『すべて持ち合わせている』というわけではない。
センエースという神を理解する上で大事な『大きな流れ』に関しては、おおよそ理解しているが、それは、センエース教科書の『目次』をバーっと流し見したみたいなもの。
ゆえに、細かい情報まで共有できているわけではない。
『第十アルファ』が『強大なモンスターが湧きやすい世界である』……みたいな細かい情報は、例えるなら、『センエース教科書の35680ページの右下に小さく書かれている注釈』みたいなもの。
そんなものは認識しているわけがないのである。
「この世界のモンスターの湧き方にかんしては、あとで調べることにしましょう。……それで、どうします? ここからの一手としては、レインボーやその配下を制圧して、手駒に加えた上で、この森を拠点化する……というのが、なかなか丸いように思うのですが」
「拠点化するなら大きな街中の方がいいと思うが? こういった人目のつかない場所に拠点を作ることにも、もちろんメリットはあるが、デメリットもそれなりにある」
「その辺は、お好きに決めていただいて結構ですよ。拠点に関して、僕の方では、『どうしてもこうしたい』という願望・要求はありませんので。基本的命令権を有するあなたの意見に従います」
「……ふむ……」
そこでUV1は、少し悩んでから、
「現状、この森と、周辺の村は、うまく距離感を保って、問題なくやっていっているように思う。その均衡を無理に乱して、余計な混乱を扇動する必要もないだろう」
「森の深部には、珍しい鉱石や薬草などが山のようにありましたので、レインボーを倒して、この森の奥深くまで開拓できるようになれば、周辺国や村々の文明レベルが数段階上がる……という気もしなくはないですが……ま、お好きにどうぞ」
「不愉快な言い回しだな。私が間違っていると思うのであれば、直接的な言葉で指摘しろ。そっちの方が健全だ」
「間違っているなどという気はないですよ。僕の視点では『こっちの方がいい気がする』という客観的な『別視点の意見』を述べているだけです。あなたに反論はしていないし、否定もしていないし、ましてや攻撃しているわけでもないんですから、無闇やたらにつっかからないでもらえます? 鬱陶しいので」




