64話 ANSWER。
64話 ANSWER。
「確かに、お前の頭には、強い呪いが仕込まれていた。その呪いは、さっき回収……消滅したわけだが……となると、お前は、もうその衝動を失っていて、世界に対して何かしら献身しようとは思わなくなった感じか?」
「やっぱ、ボクの呪いを奪ったんすね。体、大丈夫っすか?」
「人の、ちょっとした言い間違いを、嬉しげに指摘してくるんじゃねぇ。鬱陶しい。俺は活舌も悪いんだ。それを踏まえた上で会話しろ」
「言い間違いねぇ」
「そんなことはどうでもいい。それより質問に答えろよ」
「……センセーが奪った呪いは、『病気の部分』だけで、『衝動の部分』は、まだ残っとるっすね。どうせやったら、こっちを奪い取ってほしかったんすけど……」
「……」
「これは、ボクを縛っとる呪いの中で、もっとも重たいもの。たぶん、原初の世界の深層にいかんと解呪できんもの。これは、何がなんでも解きたい。もう、しみったれた社会貢献とか、うんざりなんすよ。と言うわけで、センセー、ナンバーゼロたちを殺して、理想のハッピーエンドを迎えようじゃないすか」
「衝動ってのは……」
「はい? なんすか?」
「心のブースターになれるが、『動機の一等賞』にはなりきれねぇ」
そこでセンはニっと笑って、
「お前の呪いは絶対に殺してやるよ。縛りを失って、言い訳を失って、拠り所を失ったお前が、それでも誰かを助けた時、お前が何を言うのか興味があるからな」
「あ、じゃあ、ナンバーゼロ達を殺してくれるんすか?」
「だから、それは却下だと言っている」
「なんで言うこと聞いてくれないんすか! もう、ボクがいるんだから、ボクの劣化版でしかないあいつらなんて、いらないじゃないすか! ボクとあいつら、どっちが大事なんすか!」
「俺は俺が大事だと思うもん全部を守るために最強を求めた。欲しいもん全部と向き合うと決めた俺の覚悟を舐めるなよ、星桜」
「……全部を守ろうというワガママ、それ自体を否定する気はないっすよ。どうしてもやりたきゃ、好きなだけやればええと思っとるっす。けど、もう無理やと分かったら、その時は、ボクがこの手で、シューリを殺す。そうやないと、センセーが、ボクの呪いで死んでまうんで。それだけは、プライド的に許されへんので」
「無駄な心配するなよ、星桜。全部、どうにかしてやる。理想のハッピーエンドをくれてやる」
「……」
「何も問題はない。なぜなら、俺が、ここにいるから。望めよ、星桜。完璧に輝く明日を。大丈夫。全部うまくいく」
そこで、センは、強烈な覇気を込めて、
星桜の目をまっすぐに見つめて、
「……お前だけのヒーローになってやる」
堂々と宣言した。
それは、ほとんど呪い。
決して投げ出せない誓い。
そんな、重たいものを投げかけられて、
星桜は、グっと奥歯をかみしめた。
下手したら泣きそうだったから。
けれど、ここで涙を流すのだけは、プライドが許さなかったから。
だから、星桜は、強く、強く、奥歯をかみしめてから、
「ナンバーゼロを殺すんが、どう考えても、一番はやいんやけど……まあええわ」
彼女も、トゥルーエンドを求めると決めた。
別に、トゥルーエンドが欲しいからじゃない。
世界で一番大事な男がそれを望んでいるから。
それ以外の理由は皆無。
「どうしても、ナンバーゼロを殺したくないなら、別にそれでもええっすよ。それ以外の方法とか、全部、無謀というか、ヤバいのばっかりやけど……キチ〇イの王様であるセンセーなら、もしかしたら、いけるかもしんないっすね」
「ちなみに、星桜さんよぉ。シューリを殺す以外で、お前のおすすめは?」
「んー……そうっすねぇ……『すべての世界を統治する』とかが、現実的なラインじゃないっすかねぇ。すべての命を支配下において、その信仰を一身にうければ、センセーの神気が爆上がりするから、もしかしたら、あるいは、なんかの間違いで、届くかもしれない可能性もゼロではない気がしなくもないっすよ」




