６２話 フランクに見えて強固なＡＴフィールド。
６２話 フランクに見えて強固なＡＴフィールド。
「ボクの額に撃ち込んだアレ、なんだったんすか？」
「何度も言わすな。ただのエネルギーの塊だ」
「推測するに、『ボクの呪いを吸収する』みたいな弾じゃないっすか？ ボクの呪いは回復魔法でどうにかなるようなものやない。けど、何でもできる最果ての神様なら、『ボクの呪いを奪い取る弾丸』という無茶ぐらいは、どうにか出来そうっすよね」
「……なんのことか分からんな」
強固な態度のセンを見て、
星桜は、フっと鼻で笑い、
「歪んだ孤高。フランクに見えて強固なＡＴフィールド。頑固で、ひねくれ者で、嘘つき。素の自分を出すことを忌避する臆病者。幸福にはなれへん性格っすね。ヘドが出るっす」
センエースの言葉を、そのまま踏襲してから、
続けて、
「産まれて初めて、健康な状態になれて、爽快な気分ではあるんすけど、その分センセーが苦しんでいるのかと思うと、別に嬉しくもないっす。というわけで、ボクの呪いはボクが受け止めるんで、返してもらっていいっすか？」
「なんのことかわからんが、仮に、俺がお前の呪いを奪っていたとしたら、俺は、絶対にそれを放棄しないだろう。なぜかって？ カワイイ女の子の前でカッコつけないやつは男じゃねぇからさ」
「……マジな話、ボクの呪いを肩代わりして、めちゃくちゃしんどいと思うんすけど、辛くないんすか？」
「くくっ、ははははは！」
と、そこで、センは、
高笑いを決め込んで、
「この程度で？ 俺が？ 辛くないかって？ まったく……ナメられたもんだな。なんのことか分からんが」
と、もはや、ちょっと何言っているかわからん状態で、
それでも、センは、続けて、
「こっちは、これ以上にしんどい地獄を６つ背負った状態で２００兆年を生き抜いてきたキチ〇イの中のキチ〇イだぞ。俺のファンタジスタっぷりを前にすれば、どんな地獄も、泡吹いてヘソ天する。そういうものだ。なんのことか分からんが」
ついに、『なんのことか分からんが』が語尾になってしまった。
そんなセンの、『やべぇ変態ぶり』を前にして、
星桜の心の中は、ぐちゃぐちゃにかきまわされる。
欲しい言葉を全てくれる男に、
無限のおかわりを要求したくなるという、恋する女王様のワガママ。
「……ボクの頭を撃ち抜くという、あえて『罰』に見えるようにした理由は、『殺されかけた配下の手前』というのもあるとは思うっすけど、それ以上に、『ボクが他の連中から、これ以上嫌われないようにするため』っすかねぇ。過剰な叱責を受けた弱者に同情するのが人のサガっすから。その心根は、ウチのバカな親戚連中も変わらない」
「……」
「余計なお世話っすよ、センセー。ボクは誰にどう思われても、どうでも……あ、いや、これは嘘になるっすね。正式に言い直させてもらうっす。ボクはセンセー以外にどう思われても、どうでもいいっす。本当に心底」
「勘違いするな。お前のために俺が何かをすることはない」
「もう、ほんと、エグイぐらい、ずっと口説いてくるっすね。さすがに、お腹いっぱいなんすけど」
お腹はいっぱいだが、しかし、それでも、欲しくなる。
愛の欲望の前で機能する自制心など存在しない。
