59話 そなたは美しい。
今日は遅くなる可能性があるので、
朝に2話投稿します。
本日の1話目です。
59話 そなたは美しい。
セラが、よくわからんことを叫び始めたので、
センは、心底しんどそうな顔で、
「……で? 何の用だ? また、何か別の方法でも判明したのか?」
「そうなんすよ。とりあえず、『エビルアメーバの突然変異』と『死霊の邪神』と『疫病神のナンバーゼロ』の三匹を八つ裂きにして殺せば、原初の世界に行けるという、とても簡単な方法を発見したので、勇気だ愛だなんだと騒ぎ立てずに、今から一緒に、これから一緒に、殺しに行こうか。やーやーやー」
「……」
「ほかにも、何匹か厄介そうなメスがいるっぽいすけど、まあ、その辺のザコは、ボクの方で処理しとくんで、心配はいらないっす。とりあえず、まずは、最初にあげた厄介な三匹を、的確かつ速攻で殺しておくべき。異論反論は、ないっすね? さ、というわけで、さっそく――」
「セラ」
「なんすか?」
「お前は美しい」
「……」
「できれば、美しいままでいてくれ。これは、『推しのアイドルが酒飲んで暴れているところは見たくねぇ』って感情に酷似している。かっこいいやつのダセぇところは見たくねぇってのもそうかな。映画とかで、恥をかいている人を見ると目を覆いたくなるって現象があるだろ? 共感性羞恥だったか? あれとも似ている。……お前の、せっかくの美しさを、意味のないサイコで穢すなよ」
「……知った風な口をきくじゃないっすか、センセー」
「別に何も知りはしない。……『第一アルファで生きていた時代は、ずっと、お前に守られていた』……そんな『情けない事実』に、俺は気づいてすらいなかったよ。お前があまりにもうまく隠しすぎていたってのも原因の一端にあるが」
「……」
「お前の偉業は多すぎて、途中で、数えるのをやめたよ。ザっと判明していることだけでも、自力での携帯ドラゴン作成に、核戦争の勃発阻止に、生物兵器拡散の阻止、昔からたまに沸いていたオリジナルバグや、厄介な異界問題の処理……細かいところで言えば、他にも、悪人から巻き上げた金で世界中の児童養護施設の支援、エネルギー問題や食糧問題解決への挑戦、複数の政治家を傀儡にして福祉関係の法整備を強化、世界全体のテクノロジーを急速発展させるための技術提供……一個だけでも、歴史の教科書にでかでかと名前が載るレベルの偉業を、数えるのが嫌になるほど積み重ねてきた……お前の異常レベルな世界への献身には、もう言葉もないよ」
「……」
「そんなお前の寿命が残り半年そこら……生まれた時からの死の病に侵されて、二十歳まで生きられるか分からない。物心つく前から、骨痛、筋肉痛、関節痛、頭痛、嘔吐、眩暈に悩まされてきたらしいじゃねぇか。……この世界の不条理さもたいがいだよなぁ」
「美人薄命とはよく言ったものっすよね」
「運命ってやつは、ほとほと理不尽で、どうしようもない輩だが……しかし、俺は、そんな運命を殺すための力を磨いてきた」
そこで、センは、星桜の目をじっと見つめて、
「お前は死なねぇ。お前の死だけは許さない。お前を見殺しにする世界は俺が滅ぼす」




