55話 いかに冷静でイカレてるか、相手に理解させるのが駆け引きのコツ。
55話 いかに冷静でイカレてるか、相手に理解させるのが駆け引きのコツ。
「ようやく成果を上げられたから、遅ればせながらも、こうしてはせ参じた……と、そんないじらしいボクを、さっきの爺さんは、理由もなく追い払おうとして、あまつさえ、首をしめようとしたんすよ? そんなキチ〇イを、正当防衛で投げ飛ばしたってだけなのに、ボクは、センセーに頭を潰された……ああ、なんて、可哀そうなボク。そう思わないっすか、センセー」
「……」
「自らの大いなる非を認めて、ボクの足をなめ、永遠の服従と愛を誓うなら、原初の世界に行く方法を教えてあげてもいいんすけど、どうするっすか? ねえ、センセー」
センは、そこで、三秒に満たない間をとってから、
「……二度と、俺の配下に攻撃するな。『マジの自己防衛』が必要な場面以外で『無茶なワガママ』をかますな。もし、俺の配下との人間関係の中で、本当にしんどい問題が生じたら、どうにかしてやるから、俺に言え。……その条件をのむのであれば……」
そこで、センは指をパチンと鳴らした。
すると、セラの指に強大な魔力が宿る。
「一発だけ、神殺指銃ランク15000を使えるようにしてやった。お前の努力と献身に対する褒美だ。俺を殺させてやるよ」
「…………ふふ」
と、セラは楽しそうに笑って、
「じゃあ、遠慮なく」
狂った笑みを浮かべると、
神の魔法が宿った指を、
『自分自身のコメカミ』にあてて、
迷いなく、
「バーン」
自分の頭を吹っ飛ばした。
センは、一瞬、何が起こったか分からなかった……
が、センエースは、『セラと同じフラグメント』を有する女神シューリ・スピリット・アースと長く付き合ってきたので、
セラの行動の意味が、なんとなく、ほんの少しだけ理解できた。
センは、渋い顔で、
反魂の神聖式の準備を始めた。
彼女の頭は吹っ飛び、完全即死状態。
神の慈悲でも、完全な死には対応できない。
彼女のコアオーラを、回収し、
『完全再生させた彼女の体』に押し込めていく。
無心でサクサクやっているように見えるが、
内心では、様々な複雑極まりない感情が渦巻いていた。
センは、あらためて思う。
酒神シリーズの因子は面倒くさい、と。
「……っ」
生き返ったセラは、眼球を彷徨わせて、センエースを探した。
センを視界にとらえると、黒い笑みを浮かべて、
「死者蘇生も楽勝とは、おそれいるっすね」
「……何がしたいんだ、てめぇ」
「いかに冷静でイカレてるか、相手に理解させるのが駆け引きのコツなんすよ」
「……」
「引用を好むというのも、トウシから聞いてるっす。あと、キチ〇イレベルに高潔とか……自分に対しては厳しいけど、下僕に対しては異常に甘いとか……あと、口では色々いうけど、責任感が異常に強い、とかも」
「……」
「なんの罪もないボクの頭を二度も吹っ飛ばした。その責任はとってもらうっすよ」
「罪はあるし、二度目に関しては、お前が勝手にやったことだろ」
「もちろん、そうっすよ。で、だから、なんすか?」
「……」




