54話 メギド。
本日の2話目です。
54話 メギド。
「ボクほどの美少女に手をあげるとか、それでも男っすか。美少女のお茶目は笑って許す……それが、『いい男』の最低条件っすよ。キレて暴行とか論外中の論外っす」
「調子にのってハシャぐのは別にいい。俺を侮蔑するぐらいなら笑って許してやるさ。ツラの悪さをイジられようが、頭の悪さを笑われようが、男としての出来の悪さを嘆かれようが。……もっと言えば、解剖したいって要求されようが、カツアゲされようが、ザコ認定されようが、その程度じゃ、俺がガチで切れることはねぇ。注意はするし、哀しくはなるが、本気の怒りは抱かねぇ。だが、配下を不当に殺されかけてヘラヘラ笑ってやる気はねぇ。シャ〇クスのテンプレかましてる訳じゃねぇぞ。『まっとうな社会の組織に属する一人の上司』として、当たり前のことを言っているだけだ。俺にとっては、現状だと、正式な配下であるゴンズの方が、『ただ見た目がいいだけで、俺が何に本気の怒りを感じるかすら分からないクソ女』なんかよりもよっぽど大事なんだよ、わかったか、ゴミ女」
「……」
「消え失せろ、二度と、そのツラ見せるんじゃねぇ」
ここまで強固な態度になってしまったのは、
彼女に惹かれている部分が確実にあったから。
『惹かれている』というのを理由に、『自分のルール』を緩くすることがないように……という鋼の自戒自重が、『必要以上に厳しい態度』の理由。
どこまでも、面倒くさい男。
……そんなセンの『面倒くさい部分』に、
セラは、ゾクゾクした。
センエースの根底……この異常な頑固さ、鬱陶しさに、どうしても好感を持てずにはいられなかった。
心臓を、汚い手で触られているみたい。
不快感と、『それだけではない何か』が入り混じる。
この男との関係性だけは、絶対に手放せない……と、魂の奥が叫んでいる。
……彼女も、たいがい、面倒くさい……というか、かなり歪んだ女。
セラは、
堂々と、臆することなく、
センの目の前まで大股で歩き、
手を伸ばせば届く距離まで近づくと、仁王立ちをして、
センの全てをじっくりと観察する。
「……セフレで終わらせるんは、もったいないっすね。間違いなく、今まで見てきた男の中で、一番狂っとる」
などと、ボソっとつぶやく彼女に、
センは、強固な態度を崩さず、
「消えろっつってんだろ、頭と勘だけじゃなく、耳まで悪いのか?」
冷たく言い放つ。
が、セラは砕けない。
彼女の自由は、そう簡単に殺せない。
「いいんすか、そんな態度で。ボクは、センセーが知りたがっとる『原初の世界に行く簡単な方法』を知っとるんすけど」
「……」
「事前にトウシから、『センセーが望んどるもん』を聞いとったんで、エルメスを借りて、ずっと調べとったんすよ。ボクの『メギド』だけやと、処理能力が足りんかったんで、仕方なく、プライドを押し殺して、トウシごときに頭をさげたんすよ」
星桜は、五歳ぐらいの時、自力で、簡易携帯ドラゴンを作成している。
龍脈溢れる土地、時空ヶ丘市の地下に広がる、謎の遺跡。
その最奥に眠っていたイスの遺産。
その遺産をコアにすることで、彼女は携帯ドラゴンを作成した。
「で、ようやく成果を上げられたから、遅ればせながらも、こうしてはせ参じた……と、そんないじらしいボクを、さっきの爺さんは、理由もなく追い払おうとして、あまつさえ、首をしめようとしたんすよ? そんなキチ〇イを、正当防衛で投げ飛ばしたってだけなのに、ボクは、センセーに頭を潰された……ああ、なんて、可哀そうなボク。そう思わないっすか、センセー」




