49話 この俺が見逃しちゃうとか、ただごとじゃねぇぞ。
49話 この俺が見逃しちゃうとか、ただごとじゃねぇぞ。
すべての命にひれ伏されて当然である『神の王』ともあろう者が、わざわざ、豪華な手土産を用意して、大事な客として自分たちを歓迎してくれた。
その敬意と誠意に対して、田中たちはどう応えたか。
『解剖させろ』『ものよこせ』『ざぁこ、ざぁこ』
……『キレられて当然だ』と、田中たちは、己の愚かさを、正しく認識する。
……そこで、
『パートナーをなくしている田中』の中の一人、
『田中・イス・権豆』が、
センに対して、深い土下座を決めて、
「大いなる慈悲深き主よ、ここはひとつ、ワイの命で勘弁してもらえまへんやろか」
「は? なにが?」
「主に対する、目に余る非礼の数々……ワイの死で償わせてもらいたいんですわ」
田中・イス・権豆
81歳、後期高齢者。武道家。
80を超えてなお、ムキムキの肉体を保っている探究者。
田中家の中でも、根性のイカつさでは最高ランクのスーパー爺さん。
『妻のためなら何でもできる』をモットーに生きてきた男で、その精神は、妻をなくした今も一切揺らぐことがない。
「うちの若い連中は、頭はええけど、礼儀のなってない増長したアホばっかりで……こいつらが主にしでかした、ありえへん無礼は、ワイの命一つで、そそぎきれるもんではありまへん。それは承知でっけど、どうか、この惨めで無様な老人の切腹で、愚かな一族の不始末を詫びさせていただきたい。もちろん、蘇生は必要ありまへん。亡骸はその辺に放置しといてくれて構いまへん」
そう言ってから、権豆は、懐に忍ばせておいたナイフを取り出すと、
流れのまま、一切の躊躇なく、自分の左腹部に突き刺した。
「ぅ……ぐぅう……」
左腹部に突き刺したナイフを、
さらに、右へと一直線。
「ぐぅうううううっ!」
激痛の中、それでも、奥歯をかみしめて耐える姿を見て、
センは、
「……マジでやんのかい……」
と、呆れ交じりにそうつぶやいてから、
「神の慈悲」
秒で回復させると、
指をパチンと鳴らして、
権豆の手から、ナイフを回収し、
「躊躇がないにもほどがあるだろ。……普通、そういうことをやる時は、ある程度、こっちの様子をうかがいながらやるもんじゃねぇの? で、ガチで腹に刃を入れる前に、止められるもんじゃねぇの? こっちはなぁ、お前の、『死で償うどうこう』の話を聞いている間、『こいつがマジで自殺しようとしたら、流石に止めるかぁ』とか考えていたんだぞ。そんな俺のタルい思考を置き去りにした、おそろしくはやい切腹。この俺が見逃しちゃうとか、ただごとじゃねぇぞ」
ため息交じりにそう言ってから、
「田中・イス・権豆。パートナーを無くした田中の中でも、お前は、特に、ヨメはんの死を嘆いていると、トウシが集めたデータに書いてあった。間違いないか?」
「……他者の気持ちはわかりまへん。せやから、自分の悲痛のランクはわかりゃしまへん……けど……死ぬほど……辛かったんは事実です」
「それほど愛した女が生き返ったと聞かされた直後に、なんで、腹を刺せる? 会いたいと思わないの?」
「生き返ったと知ったからこそですがな。……うちのバカ一族に対して、主が確執を抱えたままやったら、親族である妻にも被害が及ぶ可能性がある……その可能性を少しでも減らすためなら……ワイはなんでもする」
「狂った覚悟だ。気にいった……とまでは言わないが、『おもしれー男』という評価ぐらいは下してやる」
自作コミカライズ版に関して、
たくさんの意見をいただきまして、
まことにありがとうございます。
それらすべてと向き合いつつ、
作業を進めております。
とりあえず、現状、
カラーにするか、白黒にするか、
そこの問題と向き合っております。
漫画版に関しては、「こうした方がいい」という意見は、随時受け付けておりますので、いつでも、御意見、いただけたらなぁ、と思っております!
来年1月に1話を発売して終わり、ではなく、一生続けていくつもりではありますので。
今後、ずっと、そうやって、少しでもよいものにするべく、努力していく所存!
「脳死で同じクオリティのものを提供し続ける」……という気は一切なく、来年10倍、再来年100倍クオリティを上げるために出来ることを全部やっていくつもりです!




