47話 だが、断る。
47話 だが、断る。
「もったいない御言葉」
『自分が妻として認められた』と解釈したスイセイ。
その認識は、まったくもって誤解なのだが、しかし、ロマンチック乙女ゲージが振り切ってしまったスイセイは、もう止まらない。
猪突猛進ぶりだけで言えば、レイナもスイセイも変わらない。
『運命の相手を見つけた田中』の暴走機関車ぶりをナメちゃいけない。
この時の田中家女子の暴走ぶりは、あの有名な『イカれ暴走機関車』の異名でお馴染みのカンツさんをも上回る。
……スイセイの話が終わったところで、
それまで、ずっと、機をうかがっていたホクトが、
スっと、近づいてきて、
スイセイの目にも劣らないバキバキの目で、
「……主よ」
「あん? どうした?」
「先ほど、主は、『死者蘇生の願いも叶えることが可能である』……とおっしゃられましたが、それは事実でしょうか? それとも、主が愛されておられる『特有の冗談』でしょうか?」
「死者を蘇生させる『反魂の神聖式』は、えげつないほど高位の術式で、習得するのに、長久の研鑽を必要とする。そこらの神では、なかなか不可能な超絶技巧だが……まあ、俺なら、そこまで難しいことじゃない。だいぶめんどうな術式だから、基本やりたくねぇけど」
その発言を受けて、
ホクトは、
センの足元にひれ伏して、
「主よ……どうか……私の妻を……愛子を蘇らしていただきたい。それを……今回の私の功績に対する褒美としていたきたく存じます。どうか……どうか……」
切実な願い。
魂の叫び。
痛々しいほどに、
「成果が足りぬとおっしゃられるのであれば、これからも、死ぬまで、ずっと……いや、お望みとあらば、不死を得て永遠に、身を粉にして、尊き主のために働き続けると誓います。ですからどうか……」
「たった一人の女をこの場に蘇生させるだけで、『田中の中でも優秀な方のお前』が、永遠に俺の奴隷になるのか……まあ、悪くないな」
「で、では!」
「だが、断る」
「……な……なぜ……」
絶望した顔をしているホクトに、
センは、
「お前の妻だった女は、とっくの昔に、別の世界に転生し、そこで、色々あって、今は天帝をしているから」
「……転生……天帝……?」
「俺も、驚いたよ。どうせ、蘇生してくれって頼んでくるだろうから、言われるまえに蘇生させておいてやろうと思ったら……まさか、お前の死んだ妻が、ポガッサの前世だったとはな。まあ、正確には、前世の前世だが」
「……愛子は……生きているのですか……」
「ポガッサは、今、男だし、前世の記憶は一切ないし、一回絶死を積んでいるから、『お前の妻が生きている』という表現は適切ではない。しかし、『そいつがそいつであることの証明』……『フラグメント』は確実に持っている。面倒な前提を省いて、端的に、まっすぐな結論を言えば……お前の妻『田中愛子』は、別の世界で生きている」
「……」
「もっといえば、俺の母だったこともあるし、俺の子だったこともある。わけわからんかもしれんが、それが事実。そして、俺の認識上では、大事な家族。だから、最終的には、ゼノリカに迎え入れるつもりでいる。そういう諸々の事情を聴いた上で、お前は何を望む?」
この47話投稿後、20分以内に、デモを投稿します。




