44話 1000不可思議の方がまだありえる。
44話 1000不可思議の方がまだありえる。
「……トウシでも見つけられなかった答えを出すとは、お前ら、エグいな。褒めてつかわうす。ただ、んー、どっちも、無理だねぇ……無理というか、意味がわからん……なんだろう……俺は、これがおいしいかどうかを聞けばいいのかな?」
彗西が見つけた方法は、
『オメガ無矛盾アートが有する不可謬性の完全証明』
北図が見つけた方法は、
『全ての世界に点在するフィロフラグメントを一意化する』
「えっと、まず、彗西はん……これは、なんだ? えっと、矛盾しない芸術が……間違わないことを……証明……どういうこと?」
「あえて、無理に翻訳するのであれば……『完全なる美の作成』……といったところでしょうか」
「……えっと、つまり……『例外なく全員が面白いと思う漫画を描け』みたいな感じ?」
「その認識で間違いはないかと」
「となると、まだ、1000不可思議の出力の方がありえるな……」
タメ息をついてから、次に、センは、
「で、北図はん、これ、どういうこと? これに関しては、もう、わずかも分からん」
「そうですね……この結論に至る前後の文脈から推測するに……『すべての愛が報われる』……といった感じのことを言うとるんではないかと思われます」
「……『全員を満足させる神作品』……『全員の初恋が成就する世界』……難易度がイカついとか、そういう次元じゃねぇな……このラリった無理難題の前では、流石のかぐや姫も裸足で逃げ出すしかあるまいよ」
心底しんどそうに、ため息をついたセン。
そんなセンに、
スイセイが近づいてきて、
「主よ。私は、あなた様の要請に応じ、精一杯取り組み、どうにか成果を出してみせました。つきましては、そのほうびを賜りたく存じます」
などと、そんなことを言ってきた。
羽波や秀明のように、『何もしていないくせに、要求だけはしてくるパターン』だと、イライラするところ……だが、こうして、しっかりと人外級の成果を出した上で、丁寧な態度を徹底しながら、お願いをされた場合、さしものセンも無碍にはできず、
「褒美ねぇ……『携帯ドラゴンをやったじゃねぇか』と言いたいところだが、しかし、俺が俺のために、仕事用のツールを与えているわけだから、それを褒美って扱いにするわけにもいかないか。仕事で使うパソコンを支給することは、福利厚生たりえねぇ。……それに、『携帯ドラゴンをもらっていながら何の成果も出していない、ほかのやつ』は、どうするんだって話にもなる。…………いいだろう……なんでもいえ。俺に出来ることで、他人に迷惑がかかるような類のものでないなら、たいがいのことは叶えてやる。『不老不死』でも、『死者蘇生』でも、『これからやってくるサ〇ヤ人を倒してほしい』でも、なんでも――」
「では……私を娶っていただきたい」
そのセリフを耳にした、他の田中たちは、
みな、一斉に、心の中で、
(((((おまえもか、ブルータス)))))
と、叫ばずにはいられなかった。
別に、スイセイが裏切り者というわけではないが、
つい、心中で叫ばずにはいられない衝撃が駆け巡った。




