43話 特殊なアプローチ。
43話 特殊なアプローチ。
「どうあがいても行けそうにない『原初の世界』の『深層』に辿り着かないと、プライマルヒロインズの呪いは、おそらく解けません……と。おいおい、詰みまくってんじゃねぇか。おれの望み、どっちとも、しっかりと詰んでんだけど、どうするぅ?!」
そこで、トウシが、
「ワシの演算結果とも違いはほぼないな。どっかで計算ミスをしとる可能性や、他の手段に届く可能性も考慮して、親戚連中に頼ってみたけど……どうやら、根本的に、裏口入学的な方法はないらしい。いや、まあ、あるかもしれんけど、ワシらでは見つけられん。……原初の世界は、ほんまに厄介」
「こうなるってわかっていたら、仮免でショートカットしようとしたりせず、きっちり、冒険者試験をクリアして、堂々と、原初の扉と向き合っていたのに……くそ……なんか、だんだん、仮免をわたしてきたあのジジイにムカついてきた。メービーだったか、ネービーだったか、もはや名前は完全に忘れたけど……この怒りだけは、永遠に消えることはないだろう」
その後、センは、一応、他の『田中』にも携帯ドラゴンを渡して、
『いけそうな方法』を探してもらった。
……ちなみに言っておくと、センは、最初から、全員に携帯ドラゴンをわたすつもりでいた。
『調べてほしい情報があるから』という理由以外にも、『第一アルファの防衛』という観点からも、『イス田中全員に、力を与えておいた方がいい』という、実に神様らしい判断を下したセン。
携帯ドラゴンを獲得した田中たちは、
神様の機嫌を損ねないよう、
全力で、お望みの情報を獲得しようと奮闘する。
しかし、結果は変わらなかった。
大半の者は、コスモゾーンのプロテクトを突破することすら出来ない。
トウシ、レイナ、ザンク、ウラスケ、このあたりは別格。
奇跡の世代に属する『アグモ』や『ナラク』など、田中家の中でも上位の資質を持つ面々は、どうにか、コスモゾーンの深部に辿り着いているが、トウシやレイナほどの成果を出すことはできなかった。
そんな中、
トウシたちの世代が産まれるまでは歴代最高傑作扱いされていた、
『北図』と『彗西』の二人が、
それぞれの特質を活かした『別のアプローチ』で、
トウシとレイナが取りこぼした答えをたたき出してきた。
『田中・イス・北図』。
63歳、初老男性。
職業、哲学者。
ザンクの祖父。
ありとあらゆる学問に精通している生粋の哲学者。
『命の根源となる真理』を追及する探究者。
知性レベルで言えば『32』。
妻を早くに亡くしており、命の消失感を散々味わい尽くした。
美形で天才で、その上、独特の哀愁を漂わせているため、死ぬほどモテたが、妻以外を女と思ったことが一度もないという、破格の一途っぷりが特徴の一つ。
興味のある分野とパートナー以外はどうでもいい、という、典型的な田中。
『田中・イス・彗西』。
41歳、女性。
職業、アーティスト。
奇跡の世代の一人である大学生、星桜の従叔母。
知性レベルで言えば『33』。
空間芸術、時間芸術、総合芸術、すべての分野で世界最高峰のスペックを誇る万能芸術家。
まだ、パートナーを見つけていないが、特異な思想によるものではない。
秀明と違い、見つける気はあるが、出会えなかっただけ。
本質的には、興味のある分野とパートナー以外はどうでもいい、という、典型的な田中。
この二人が、今回たたき出した功績は、ノーベル賞が束になってかかってきても相手にならない別次元。
なんせ、トウシとレイナでも届かなった領域を見つけ出したのだから。
それ自体は、本当に、とても素晴らしいことなのだが、
「……トウシでも見つけられなかった答えを出すとは、お前ら、エグいな。褒めてつかわうす。ただ、んー、どっちも、無理だねぇ……無理というか、意味がわからん……なんだろう……俺は、これがおいしいかどうかを聞けばいいのかな?」




