42話 1000不可思議。
42話 1000不可思議。
「……凄まじいプライドの高さだ。俺のパワハラに対し『カウンターをいれるためだけ』に、ここまでするとは……腹のたつメスガキだが……その気高さだけは認めてやる。お前のヤバさは、シューリに匹敵する」
などと、そんなことを本気で口にするセン。
『自分がレイナに愛されるなどあるはずがない』と確信している『センの視点』だと、レイナの行動は『センに対するカマシ』でしかないのである。
『下等生物とバカにされ、知性など暴力の前では飾りでしかない、と自慢の個性を見下されたことに腹を立てて、センエースでは絶対に届かない答えを導きだそうとした』
……それが、センの中での、レイナの行動理由。
「すごい女だよ。……小6で、そんだけ本気のプライドをぶちかませるやつはそういない。こいつも田中だから、いずれは、パートナーを見つけるんだろうが……これほど気の強い女と結婚生活を送る男は大変だな。というか、これほどイカれたヤツが、誰かに惚れるところは想像もできないな……こいつほどの女の目には、世の男の大半がハナクソに見えることだろう」
そんな、あんぽんたん発言を受けて、周囲の田中連中は、
『センがレイナの行動理由を誤解している』という事に気づき始める。
(え、レイナの気持ちに、気付いてへんの?)
(もしかして、ギャグで言うとる?)
(あるいは、遠回しな拒絶? いや、そういう感じでもないか……)
(うそ……やろ? 死ぬほど露骨やったやん。完全にメスガキではなく、メスの顔になってたやん)
(え、もしかして、ほんまのアホなん、この神様……)
(鈍感とか、そういうレベルやないぞ……)
周囲のメンツが、センの特異なヤバさにひいている中、
センは、レイナからもらった情報に目を通していた。
「これは……えぐいな……」
原初の世界にアクセスする方法は、
『ほぼ不可能と言っていい前提』を棚に上げれば、
実のところ、それなりにある。
その中で、一番分かりやすい方法は、
「存在値『1000不可思議』の出力で、次元に穴をあける……ははは……もう、ほんとに……やべぇな。俺が『10京ぐらいの出力』を得るために、どれだけしんどい旅路を重ねてきたと思ってんだ……」
不可思議は、那由他よりも大きい単位。
兆の上である『京』……その上に位置する『垓』とか『秭』とか『穣』とか、
そういう、もはや聞いたことがないレベルの単位の遥か果て。
1000不可思議は、0の数で言えば『67個』もある。
センが200兆年かけてたどりついた10京は、
0が『17個』しかつかない。
「原初の世界がやべぇ世界だってことは、俺も、一応は神の一柱だから、知っているつもりだったが、『一度、たまたま召喚された』って事実があるせいで、ちょっとナメていたなぁ。……どこかで、『今の俺が普通に頑張れば、秒でいけんだろ』って、タカをくくっていた……」
原初の世界にいくための条件は、他にも無数にあるのだが、
そのどれもが、難易度で言えば、
『存在値1000不可思議の出力で次元に穴をあけろ』、
というのと同じレベルの異常な狂気。
できるわけねぇだろ、と呆れてタメ息しか出てこなくなるレベル。
「……で、そんな、どうあがいても行けそうにない『原初の世界』の『深層』に辿り着かないと、プライマルヒロインズの呪いは、おそらく解けません……と。おいおい、詰みまくってんじゃねぇか。おれの望み、どっちとも、しっかりと詰んでんだけど、どうするぅ?!」




