40話 愛の奇跡という冗談。
40話 愛の奇跡という冗談。
レイナの中で、ロマンチック乙女ゲージが、さらなる暴走を開始する。
『出会えた』と思った時から、ずっと、宇宙みたいに、無限の膨張を続けている乙女心。
レイナの視点では、白馬に乗った王子様が、ずっと、理想以上の美しさを魅せつけてくる。と、言った感じ。だから、彼女の中で、想いが膨れ上がっていく。
ずっと、欲しい言葉をくれる。ずっと、欲しい想いをくれる。
那由他を積む覚悟はあった。
けど、それが大変であることぐらい、頭がいいので想像できた。
自分のがんばりを認めて欲しいと思った。
少しでもいいから、その苦労をねぎらってほしいと思った。
欲望は無限、
欲しい言葉は無限。
その全てを叶えてくれる男は流石にいないだろう……
そう思っていた彼女の心。
その全てを、完璧に包み込んだ閃光。
レイナは沸騰する。
脳の中で、さらなる革命が起きる。
さっき、大きな革命が起こったばかりなのに、
そんなものじゃ足りないとばかりに、
彼女の全部が、ありえないほどの沸騰を起こす。
バリィンッッ!
と、鎖が引きちぎれる音が響いた。
自分を縛っている鎖が死んだ。
彼女は、
『本来の自分』を取り戻す。
それと同時、
パァアアっと、
何かが開く音が、確かにした。
自重を忘れて、連続する革命。
『愛の奇跡』などという『ふざけ尽くした冗談』で、
世界のルールや倫理をあざ笑っていく。
神種の覚醒にともない、
彼女の中で、
「……プラチナ……スペシャル……っ……」
目覚めた可能性。
暴走が、いつまでたっても終わらない。
彼女の中で目覚めた可能性、
それは、『サンスクリットアライブ』。
一言で言えば『愛の奇跡』を現実にする力。
愚直に言えば、不可能を可能にする力。
(……出力が、演算速度が、机が足りん……これだけやと……王の妻は名乗られへん……)
愛とプライドに後押しされて、
より深く刻まれていく想いの結晶。
重たく、じっとりと、ズンと、メンヘラに、膨れ上がっていく混沌。
レイナは、さらなる追及を開始する。
足りない全てを翼に変えて、
剣の強度を補っていく。
携帯ドラゴンが慟哭をあげた。
技術者でなくとも分かる、誰の目にも明らかなオーバーヒート。
それでも、レイナは止まらない。
きっと、ぶっ壊れて、歪んで、腐っても、その暴走は止まらない。
休憩なし、ノルマ激重、報酬無し、魂魄がバグる可能性あり、
狂気の領域に至ったブラック企業シフト。
深く、深く、自分の中へと没頭していくレイナ。
結果、
「……超神化……」
足りない出力を、自分の中から捻出する。
覚醒のバーゲンセール。
もはや、ここまでくると、天才がどうとか、そういう次元でもないような気がする。
明らかな異常事態。
何が起こっているのか、
究極超神センエースでも、理解できなかった。
(神種が芽吹いて、プラチナが目覚めて、その上で、超神化した? この数秒の中で? なんだ、こいつ……マジか……超神になるのに、俺がどれだけ苦労したと思ってんだ……俺だけじゃねぇ……バーチャとか、ゼノリカの面々とか……みんな、どれだけ……)




