38話 ちょっと、ソウルゲートで、100那由多年ほど、頑張ってくるから、少し待っててくれん?
38話 ちょっと、ソウルゲートで、100那由多年ほど、頑張ってくるから、少し待っててくれん?
(えっと、原初の世界にいく方法、原初の世界にいく方法……あ、そっちも、なんか、カギかかっとるな……うわ、鬱陶しい……鍵を開けるためには、原初の世界の深層にいかないかんけど、原初の世界にいくためには鍵を開ける必要がある……あ、詰んでるやん……うざぁ)
舌打ちをかましていくレイナ。
苛立ちから、つい、貧乏ゆすりをしてしまう。
その態度を、横から見ているセンは、
(態度わるぅ……こいつ、もしかして、俺に殺されてぇのか? そうとしか思えないムーブが留まるところを知らないんだが……)
イライラを止められない。
センが、そんな風にイラついていることなど、つゆ知らず、レイナは、必死になって、原初の世界にいく方法を探す。
探して、探して、探して、
そして、
「あかんわ、旦那様。無理」
(こ、このガキ……)
さすがに、手が出そうになったところで、
レイナが、
「今のあたしの力では、このパズルを秒で解くんは不可能。ちょっと、ソウルゲートで、100那由多年ほど、頑張ってくるから、少し待っててくれん?」
そう言いながら、ソウルゲートを顕現させる方法を検索し始めるレイナ。
彼女の瞳に宿っている輝きが、冗談のソレではなく、マジもんのガチだと、流石に理解できたセンは、
「待て待て待て待て」
と、『それまでに募らせたイライラ』を完全に忘れ、
レイナの狂気に、本気の『待った』をかけて、
「俺には分かる。お前、今、冗談じゃなく、マジで、那由他を積もうとしたな?」
「もちろん、旦那様。そのぐらいやないと、見つかりそうにないからね」
「いや、あのな……俺でも、200兆が限界だったんだよ。いや、まあ、限界じゃなかったが、しかし、この俺が壊れそうになるぐらいの時間だったんだよ。わかるか? 那由他つったら、兆の何倍だと思っている? 京、垓、秭、穣、溝、澗、正、載、極、恒河沙、阿僧祇、那由他だぞ。なめんなよ。できるわけねぇだろ。そんな、イカれつくした時間を積めてたまるか。この、『狂気を煮詰めた世界一の変態センエースさん』でも、流石に勘弁願いたい領域だぞ」
「大丈夫。今のあたしならいける」
と、まっすぐな目でキラキラそういう彼女に、
センは、やばいブツを見る目で、
「ええぇ……なんの根拠があって?」
そう問いかけると、
そこで、レイナは、自身の両手で、センの右手を取って、
ギュっと強く握りしめながら、
にっこりと、太陽が嫉妬する微笑みで、
「この想い」
と、根拠を、堂々宣言した。
ガキの妄想と切り捨てるには、あまりにも重たい命の爆炎。
心の芯が震えるほどの輝きを前にして、センは、つい、息をのんでしまった。
「……」
彼女の想いを突き付けられたセンは、
ほとんど一瞬の中で、
山ほどの思考と向き合ってから、
「………………ソウルゲートは使うな。これは命令だ」
「え、なんで?」
「地獄を積むのは俺だけでいい。どうしても、それをやらなきゃいけない時は……俺がやる」
その言葉を受けて、レイナの心臓がドクンと跳ねた。




