表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
419/5859

52話 神の要求


 52話 神の要求



「お前が、この先、『ガラクタ以外の何かになれるかどうか』はしらん。だが、今ここで諦めれば、お前は間違いなくガラクタで終わる。それだけは断言できる」


 神に、ガラクタと認識されたままデリートされる。

 つまり、永遠のガラクタとなる。


「だが、高みを目指すというのなら、お前という、今は『しょうもないだけのガラクタ』が、いつか、『それ以外のナニモノか』に変われる可能性はゼロじゃなくなる。それも事実だ」


 これは『本気』のメッセージ。

 だから、一つ一つの言の葉が、

 『フッキの心』の奥へと届く。




 ――そこで、センは、


「とはいえ、あくまでもゼロじゃないだけで、限りなくゼロだとは思うが。……なぜ、そう思うか、その根拠も欲しいだろうから、特別に、少しだけ」


 フッキの頭部に手をあてて、


「俺が辿ってきた道を見せよう」


 言いながら、目を閉じた。

 そして、フッキの脳内に、センの記憶を流していく。


 積み重ねてきた道。

 一歩ずつ、一歩ずつ、

 気が遠くなるほどに積んできた研鑽の嵐。


「ぁ……ぁ……」


 『地獄』なんて評価は生ぬるい。

 どんな品詞でも装飾しきれない、

 『膨大な基礎』の上に築かれた、

 天高くそびえ立つ巨大な神の城。


 センの軌跡、『その一部』を目の当たりにして、

 フッキは、


「あぁ……ぁあ……」


 身を震わした。

 涙を流すことができたならば、きっと、人目もはばからずに泣いていただろう。


 神は、想像を絶する絶望を超えて、

 今、ここに立っていた。


「どうだ? イヤになるだろ? カラッポが高みに至るためには、最低でも、それぐらいはしんどい想いをする必要がある。それだけの道程を経て、いまだ俺はナニモノでもない。真理はカケラも掴めちゃいない。最強を目指すってのは、そういう事だ」



 ――神の言葉に包まれて、ついに、フッキは泣いた。

 構造上、涙は出ないが、確かに泣いた。


 衝動に揺さぶられて、言葉が出てこなかった。

 湧き上がってくる『何か』を抱えるだけで精いっぱい。



 ――そんなフッキに、センは続けて言う。


「くだらねぇ。しょうもねぇ。無意味で無価値で、ただ虚しい。最強ってのは、そういうカラッポの延長でしかない。それを理解した上で……もし、まだ、『自分は最強だ』と『無謀なバカ』を叫び続ける気概が残っているのなら、お前に可能性をくれてやる」


「かのうせい……ま、まさか……」


 センの発言を受けて、フッキの脳裏に、都合のいい未来が浮かんだ。

 あまりにも虫のいい夢。


 そんな訳がないとは想いつつも、口に出して確認せずにはいられない。


「まさか……俺なんか、を……あなたの……剣に……していただけると……?」


「この先、俺が望む領域まで、もし辿りつけたなら……考えてやらないでもない」


「っっ!」


 ぶっこわれそうなほどの衝動が走った。

 曇天が晴れていく。

 心の形が分かった気がした。


「もちろん、俺が望む世界まで辿りつけなければ、迷わずスクラップにする。ちなみに言っておくが、俺は妥協を許さない」


 神の発言を、決して聞き逃すまいと、フッキは意識を集中させる。


「俺の要求水準は狂っている。正直、お前が辿りつけるとは思っていない。お前は、ほぼ確実に廃棄されるだろう」



 神の発言に嘘などあろうはずもなく。

 ゆえに、フッキは、素直に、自分の置かれた状況が『厳しいものである』と思った。


 目の前の神が積み重ねてきた地獄に妥協はなかった。

 センエースという神は、終わりない絶望を乗り越えて、今、ここに立っている。


 その『圧倒的な強さ』には、想像を絶する裏打ちがあった。

 わずかな弱さも許さない、飛びぬけて狂った精神力。

 磨きあげてきた努力の結晶。

 その果てなき鍛錬は、もはや狂気の沙汰。


 最果てに辿り着いた神。

 理想を体現する究極の英雄。


 フッキは思う。

 自分ごときが、これほどの神の剣になれるとは思えない。


 神が言うように、自分は、いずれ、ただ廃棄され――


「……だが、もし、」


 そこで、神はフッキの目をまっすぐに見据え、


「お前が、この先、果てなく努力を重ね、血反吐にまみれながら研鑽を積み、いつか、俺が満足する領域まで辿りつけたその時は――」



 歪みも濁りもない、全てを射抜くような、強い視線で、神は言う。



「お前の全てを愛すと誓おう」



「……っっ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自作コミカライズ版35話公開中!ここから飛べます。 『センエース日本編』 また「センエースwiki」というサイトが公開されております。 そのサイトを使えば、分からない単語や概念があれば、すぐに調べられると思います。 「~ってなんだっけ?」と思った時は、ぜひ、ご利用ください(*´▽`*) センエースの熱心な読者様である燕さんが描いてくれた漫画『ゼノ・セレナーデ』はこっちから
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ